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組織の治癒に必要な期間|靭帯・腱・骨・軟骨

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スポーツでは、様々な組織が怪我を起こします。
 
それぞれの組織はそれぞれの特徴から、異なった治癒過程を経ます。
その結果、治癒に要する期間は組織によって異なってきます。
 
 
以下の記事では、筋組織神経組織の治癒とその期間いついてまとめました。
 
 
というわけで今回は、
結合組織の治癒とその期間について解説していきます。
 
 
 
 
 

結合組織の治癒

結合組織の治癒は、原則は「修復」という治癒過程によって行われます。
 
しかし、骨癒合という独自の治癒過程を行うことから治癒期間にばらつきがあり、
軟骨血液供給によって期間が変化します。
 
 
結合組織の詳しい治癒メカニズムについては以下の記事で。
 
 

靭帯の治癒

 
靭帯の治癒過程は、以下の要因によって阻害される可能性があります。
  • 炎症段階での内圧の上昇
  • 不適切な瘢痕の形成
  • 隣接する部位への瘢痕の付着
 
 
靭帯の治癒を阻害する要因
炎症段階において腫脹が生まれると炎症部位の内圧が上昇し、
血管が圧迫されることによる血液供給不足や、リンパ循環の低下が起こります。
これらは、組織の炎症段階を長引くことに繋がります。
 
瘢痕組織の形成異常としては、「拘縮」「癒着」が挙げられます。
拘縮では、過剰に瘢痕が形成されることによって瘢痕のリモデリングに期間を要します。
癒着では、隣接する健全な組織も瘢痕化されることによって可動域制限筋力低下が生じます。
 
また、それ以外に慢性的な炎症によって瘢痕が十分に形成されれないことも起こり得ます。
 
 
靭帯治癒のタイムスケール
靭帯は、通常の修復過程によって修復されます。
 
修復では、6週間程度瘢痕組織が十分に形成されます。
その後、組織に再度負荷をかけることで瘢痕組織がリモデリングされ、8週間程度で靭帯として機能するようになります。
 
微細損傷の場合は、残っている靭帯が十分に関節の安定性を保持できるため、炎症段階が終了すると同時にプレーすることができます。
しかし、再発のリスクに注意する必要があるでしょう。
 
 

腱の治癒

 
腱は、靭帯と同じ修復過程を経ます。
そのため、靭帯と同様の要因が、腱の治癒を遅延させる原因となります。
 
 
腱の治癒での問題
腱は筋肉によって負荷を頻繁に負荷が掛かることから、靭帯と比較して余分に線維芽細胞を活性化させ、コラーゲン線維を合成します。
 
その結果、線維芽細胞がより増殖したことで、瘢痕組織の形成を早め、組織の強度を早い段階で獲得することができます。
しかし、靭帯に比べて組織のリモデリングに多くの時間を要します。
 
また、筋肉などの組織に癒着を生じる可能性が高くなります。
 
 
腱治癒のタイムスケール
腱は、2~3週間程度で線維組織が形成され、4~5週間程度で筋収縮に耐えうる強度になります。
 
その後、リハビリテーショントレーニングを行い腱がリモデリングされるまでに8週間程度必要です。
 
靭帯や腱は、適切なリモデリングを行えば本来の組織に近い強度まで回復しますが、完全に本来の組織の強度を取り戻すことはないと言われています。
 
 

骨の治癒

 
骨は結合組織ですが、骨癒合という独自の治癒過程によって「再生」します。
 
靭帯や腱などの「修復」による治癒では、損傷した組織を部位に新しい組織を形成するのに対して、
骨組織などの「再生」では、損傷した組織を作り治します
 
そのため、再生では本来の組織の強度を取り戻すことができます。
 
 
骨の治癒メカニズムに関しては以下の記事で。
 
 
骨癒合のタイムスケール
骨の治癒期間は、以下の要因によってタイムスケールが異なります。
 
  • 損傷部位の大きさ(重症度)
  • 損傷部位の血液供給
 
典型的な長骨の治癒では、3~6週間で仮骨が形成されます。
その後、リモデリングが開始され、約8ヶ月で完全に治癒します。
 
一方で、手の骨のような短骨では3週間程度
複雑骨折の場合は、2~3年掛かる場合もあります。
 

例外として手の舟状骨では、血液供給が乏しく再生能力が弱いまたは再生しないということが起きます。

 
 

軟骨の治癒

 
軟骨は、骨とは違い結合組織本来の修復によって治癒します。
 
しかし、軟骨組織には血液供給が乏しく、炎症反応が起きにくいため治癒能力が非常が乏しい組織です。
 
 
軟骨治癒のタイムスケール
軟骨の治癒期間は、損傷部位の血液供給に左右されます。
 
典型的な例としては、半月板の損傷があります。
半月板では、関節中央部に近い部分は血液供給がほとんどなく、修復はほとんど望めません。
しかし、外縁に違い部分では血液供給が幾分かあるため、修復が見込めます。
 
 
軟骨下骨の損傷を伴う場合
軟骨下骨の損傷を伴う場合、骨の損傷によって出血が起きます。
出血した血液は軟骨にも届き、軟骨でも炎症反応を起こします。
 
そのため、軟骨下骨も損傷した場合は、他の結合組織と同様に軟骨も修復することができます。
その場合、6~8週間程度で修復します。
 
このメカニズムを用いて、治癒が難しい軟骨に対して、軟骨下骨を人口的に損傷させる手術があります。
 
 

まとめ

以上が結合組織の治癒とその期間でした。
 
  • 靭帯と腱は、約8週間程度で治癒過程を終える
  • 腱は、靭帯より線維芽細胞が活発に働く
  • 骨は、損傷サイズ血液供給によって期間が変わる
  • 軟骨は、血液供給が乏しく修復能力が低い。
 
次回は、筋組織神経組織の治癒とその期間について解説していきます。
 
 
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