筋肉の代謝障害|筋痙攣、DOMS、マッカードル病、CPT欠損症
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皆さんどうもこんにちは。
スポーツをしてる以上筋肉に高い負荷がかかってしまうことは避けられません。
またそれによって足が釣ったり筋肉痛が起こってしまうことも同じく避けられません。
足がつるクランプや筋肉痛といった筋肉のトラブルは非常に一般的に起こるためにかなりの頻度で対応していかなくてはいけません。
国際サッカー連盟であるFIFAは、FIFAディプロマというオンラインコースを行っており、
そこでは、サッカーにおけるありとあらゆる症状に対するトレーナーの対応ガイドラインが学べるようになっています。
というわけで今回は、
FIFAのガイドラインに沿って、筋肉の痛みの原因とその対処法について解説していきます。
ここでは肉離れなどの怪我以外の原因で起こる筋肉の痛みについて解説していきます。
筋痙攣(クランプ)の概要
筋痙攣は一般的に足がつった状態です。
英語ではMuscle crampsと言い、ここではクランプと呼びます。
よくご存知だと思いますが、クランプはいつも以上の負荷が筋肉にかかったことによって起こります。
練習よりも試合で起こりやすい傾向があるのはそのためです。
クランプが起こる主な原因には遺伝的要因や年齢巾広などが言われていますがエビデンス的にはまだはっきりとしないというのが現状です。
水分補給や炭水化物の摂取によって予防効果が認められることから電解質のアンバランスが原因だと考えられていましたが、
電解質のアンバランスが直接的な原因になるというエビデンスは少く、現状考えにくいと言われています。
また、 腓腹筋、ハムストリング、大腿四頭筋などの二関節筋で主に起こると言われています。
筋痙攣(クランプ)の診断・対応・予防
筋痙攣(クランプ)の診断
クランプの診断に関しては、 FIFA のガイドラインにも特に細かくは載っていません。
というのもクランプは、選手の状態を見て明らかに診断可能であろうということでしょう。
筋痙攣(クランプ)の対応
クランプの対応は基本的には、速やかにつっている筋肉のストレッチを行うということです。
またこの時に、拮抗筋の収縮を加えることによって相反抑制を利用することも効果的だとされています。
しかし一度なってしまったクランプに対応する事は難しく基本的には交代する必要がある、という風にされています。
筋痙攣(クランプ)の予防
クランプが一度なってしまうと対応が難しいことを考えると、クランプへの対策は予防が生命線となります。
対応方法は主に三つです。
- 試合と同じ負荷でトレーニングを行う。
- 試合中こまめにパッシブストレッチを行う。
- 炭水化物の補給
炭水化物の補給は、電解質のアンバランスを防ぐ意味での効果はエビデンスでは肯定されていませんが、筋疲労の軽減による影響は示唆されており、
このガイドラインでも、 積極的に摂取することが勧められています。
遅発性筋痛の概要
遅発性筋痛とは、いわゆる筋肉痛のことです。
正式名では遅発性筋痛または DOMS といます。
遅発性筋痛は、主に12時間後に痛みが表れ、1日から2日後にピークを迎えます。
しかしこれは年齢やトレーニングの負荷と量によってかなり変わります。
基本的にはエキセントリック収縮や慣れないエクササイズを行うことによって起こりやすいとされています。
ですがこれもクランプと同じく、エビデンスはあまり整っていないという印象があります。
遅発性筋痛の診断・対応・予防
遅発性筋痛の診断
遅発性筋痛は肉離れとの診断区別が重要です。
遅発性筋痛の症状は疼痛、圧痛、腫脹・肥大、柔軟性・筋力の低下など肉離れと似たような症状がありますか、
遅発性筋痛では筋組織の実の損傷がため数日程度で回復しますが、肉離れの場合は筋膜も損傷しているため最低でも2週間程度の期間がかかります。
遅発性筋痛の場合は、基本的にはドクターなどの詳細な診断はもちろん必要ありません。
CKは有用か。否か。
筋肉のダメージの指標となるクレアチンキナーゼは研究分野でもかなり重宝されており、遅発性筋痛の程度を測るのにも、よく使われます。
しかし、しっかりと条件を整える必要があり、スポーツ現場で実用的に使うことは難しいのではないかとされています。
遅発性筋痛の対応
遅発性筋痛の対応は基本的には痛みへの対処療法となります。
主にマッサージやストレッチが効果的と考えられています。
アイスバスなどによるアイシングは現場で長らく使われていますが、
FIFAはこれを肯定するエビデンスは少ないとしています。
ですが、2018年に発表された運動後の疲労回復に関するシステマティックレビューでは、 マッサージが最も効果が高く、 アイシングも疲労回復に効果的であるという研究結果が出ています。
一方そこでは、ストレッチによる疲労回復効果は否定されています。
これについては以下の記事をどうぞ。
医学的原因による筋痛の概要
クランプや遅発性筋痛以外にも突発的に筋肉に痛みが出る症状はあります。
これはまとめて、Muscle pain、日本語に訳すと筋痛と定義しています。
ここで言う筋痛とは、代謝的障害や自己免疫状態、神経的状態などの医学的な状況における筋活動の障害とそれによる筋肉の痛み定義されています。
筋痛は、遺伝的な原因が多いため本来持っていた疾患があるタイミングで現れたという形が多く、突発的に起こるクランプや遅発性筋痛などに比べると発症率は低いですが、
サッカーの現場において大いに起こり得て、対応しなくてはならない障害です。
FIFA のガイドラインではマッカードル病とカルニチンパルミトイル基移転酵素欠損症の2つが挙げられています。
マッカードル病とCPT欠損症の概要
マッカードル病
マッカードル病はグリコーゲン代謝がうまくできないことによる筋活動の障害と筋肉の痛みが起こる病気です。
メカニズムとしては、
筋肉に取り込めたグリコーゲンの最初の反応であるグリコーゲン→グリコース-1リン酸の反応を触媒するグリコーゲンホスホリラーゼが欠損することによって起こります。
マッカードル病の症状
マッカードル病では、クランプや遅発性筋痛と違いトレーニング開始後すぐにクランプや筋肉の痛みが現れるのが特徴的です。
他には運動を終えた後にsecond-wind phenomenon と言う現象が起こることが挙げられます。
Second-wind phenomenon
セカンドウィンド phenomenon とは、運動後にランニングハイのような疲労を感じない状態が起こることです。
これが起こる原因はあまりはっきりとされていませんが、マッカードル病において起こるメカニズムとしては、エネルギー需要の低下によって脂質の供給が間に合うようになったことが考えられています。
カルニチンパルミトイル基転移酵素欠損症の概要
マッカードル病がグリコーゲン代謝の障害であったに対して、 CPT 欠損症は脂質代謝の障害です。
メカニズムとしては、
長鎖脂肪酸を細胞内に取り込む際に必要な アシルカルチニンの合成ができなくなることにより、長鎖脂肪酸をエネルギー利用できなくなることが原因です。
しかし多くの中鎖脂肪酸や短鎖脂肪酸は、自身で細胞膜を通過できるためエネルギー利用することが可能です。
CPT 欠損症の症状
CPT 欠損症は主にトレーニング開始から30分後程度で起こります。
これもクランプや筋肉痛に比べると早い段階で症状が現れることになりますが、
マッカードル病とは違い、リコーゲン代謝によってエネルギー供給ができている間はあまり症状が起きません。
また、運動を止めても同じく脂質代謝によってエネルギーが利用できないため、症状が続きます。
医学的原因による筋痛の診断・対応
筋痛の診断はまず選手の問診を行うことが重要です。
突発的に起こるものではないので、疼痛の場所という発言を明確にし発症した原因を明らかにすることが重要です。
またミオグロビン尿というコーラ色の尿が出ていないか、
遺伝的な要因も考えられるため本人や家族の既往歴を聞くことも重要です。
医学的な原因による筋痛の診断にはForearm ischemic testが使われます。
これは、前腕の筋収縮の前後での血液的指標を採取して、代謝障害を検査するテストです。
また MRI によって診断可能な症状もあります。
医学的原因による筋痛の対応
緊急の対応としては、基本的には徐々に運動強度を上げていき対応可能な運動負荷の対応を上げていくことになります。
ガイドラインでは重症の場合は、神経外科を利用することが勧められています。
まとめ
以上がスポーツ現場で起こる筋肉の痛みの種類と対応でした。
目新しい話はなかったかもしれません。
というのも、クランプや筋肉痛などの一般的なことですが、 明確に代謝的メカニズムが分かっているわけではないので、
その対応に関してもまだ不透明なところが多いという印象です。
ですが基本的に、筋疲労を防ぐことが直接的または間接的に影響してくることは確かで、
そのためにはマッサージや炭水化物の補給、アイシングやストレッチなどの方法を用いることは効果的だと考えられます。
以上です。