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サッカー関連の研究が集う学会「Football Medicine」の発表5選

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4月26日から4月29日までの4日間、ロンドンはウェンブリーで「Football Medicine」という学会に参加してきました。
 
サッカー関連の研究が集う学会では一番大きな学会で、これに参加したいがために遥々ヨーロッパまで来て、フィジオの勉強をしている言っても過言ではないかもしれません。
(んな訳はありませんが。)
 
参加費5万円(学割込み)も払ってわざわざ学会に来たので、チンと座って聞いてスンと帰るのも何なので、
今回の学会で面白かったことを皆さんに還元していこうと思います。
 

今回の学会のお目当ての紹介

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今回、遥々ロンドンに来たのにも、こんな感じのお目当てがありました。
  1. Roald Bahr, Martin Hagglund, Phil Glasgowを一目かかる
  2. 行き詰まってる感が強い怪我予防の分野について専門家はどう考えているのか
  3. 他に面白い研究している大学と教授を探す
  4. とりあえず学会デビューしとく
  5. ウェンブリー・スタジアム \( ˆoˆ )/
 
若干荒ぶりました。失礼致しました。
Bahr, Hagglund, Glasgowは、これまで論文を読んでいた中で個人的に面白い研究をしているなと思っていた方々で、
その中のBahrとHagglundの2人は、プロスポーツ界の人脈をフルに使ってトップチームのデータを疫学的に集めた研究をしていて、
もう1人のGlasgowは、肉離れのメカニズムを深くより掘り下げていこうという研究で面白い方です。
 
将来的にPhDの進路も考えているので、PhDやるならそりゃ出来るだけレベルが高いところで、しばかれ殴られしながらやっていった方がいいので、早い段階で情報収集しておこうというのが今回の自分個人の目的でした。
 
あとは、最近たるみまくってるので、心もとない英語を使う機会を設けて、未知の世界に自分をぶち込んで、
「なんでも知ってるつもりでも、本当は知らないことがたーくさんあるんだよ。」
っていう刺激をもらうのも一つの目的でした。
 
 

ACL再建後に復帰できるか否かはメンタルの問題?

 
それでは、真面目に皆さんのためになるであろう情報を紹介していこうと思います。
 
まずは、「ACL損傷後に元のスポーツレベルに復帰できるか出来ないかの違いは何から来るのか」という研究。
 
この研究では、ACL-RSIという心理アンケートのスコアを、2年以内に元のレベルに復帰できた選手(黄色)と出来なかった選手(赤色)で比較した結果、
手術後にACL-RSIのスコアが低かった選手は12ヶ月後もスコアが低く、元のレベルに復帰できなかった。
というものです。
 
また面白いことに、ACL-RSIのスコアで元のスポーツレベルに復帰できるかどうかの87%を当てられるということです。
 
もちろん、症状などは同じで心理学的スコアだけが違うので、
心理学的な怖さをうまく取り除けば、元のレベルに復帰できる選手がいるのかもしれないとも言えますね。
 
 
 

足首の内反不安定性は、ほとんどCFLで決まる。

 
こちらの研究は、献体の足首に内反ストレスをかけて行って、ATFLとCFLを切って行く研究。
 
ATFLもCFLも残っている通常状態の抵抗性が黒、
ATFLだけ切れた時の抵抗性が紫
ATFLとCFL両方が切れた時の抵抗性が黄
です。
 
ATFLが切れただけでは、あまり抵抗性には変化がなく、
CFLが切れた時にガクッと抵抗性が低下します。
有意差もATFLが切れた段階ではなく、CFLが切れた後には有意差が見られました。
 
足首捻挫では、ATFLの損傷が最も頻度が高いわけですが、
ATFLだけの捻挫では足首の不安定性には問題はなく、ただ伸ばされて痛いだけ。
ということなのかと個人的には思ったり、思わなかったり、だじばんだり。
 
逆に、慢性的な足首不安定性があるということは、CFLにアプローチしていかないと問題は改善しないということにもなるかなと思いました。
 
あと、この研究できるってカタールどんだけ金あるんだよってのも思いました。
 
 

トレーニング負荷の「Acute:Chronic比」はそれなりに有効

 
近年は、プロサッカーチームの間でGPSがかなり普及していきて、GPSによるトレーニング負荷の管理が主流となってきました。
 
「しかし、どうトレーニング負荷を評価するのか。」という点に関してはまだエビデンスは浅く、各々トレーナーの主観で管理されている部分がかなりあります。
そんな中で、現状で最も有力視されているトレーニング負荷の管理方法に「Acute:Chronic比」というものがあります。
 
これは、
  • Acute負荷:側近1週間程度(3〜10日間)の平均トレーニング負荷
  • Chronic負荷:側近4週間程度(3〜5週間)の平均トレーニング負荷
を比較して、同じなら1.0、Acute負荷がChronic負荷を上回ると1.0よりも大きくなっていきます。
 
このAcute:Chronic比と怪我のリスクを比較したのが上の研究。
ちなみに、これはプレミアリーグのアーセナルFCのパフォーマンス・コンディショニングチームが実際にアーセナルFCの選手に行なっている研究です。
 
これによると、Acute:Chronic比が1.0前後が最も怪我のリスクが低く、1.5を超えたラインから加速度的に怪我のリスクが上昇することが示唆されています。
 
 

しかし、怪我との関係性を説明するには不十分

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Acute:Choronic比が高いと怪我のリスクが高くなるのなら、
「プレシーズンに追い込んでChronic負荷を上げておけば、シーズン中も高い負荷をかけ続けらるし、怪我のリスクを下げられるんじゃないか?」
という疑問に向かっていったのが上の研究。

確かにプレシーズンのトレーニング回数が多い方が怪我のリスクは引くい傾向が見られ、有意差は出たていました。
しかし、このブレ具合ではトレーニング負荷量が損傷リスクを説明できるというには難しいと言える思います。 
 
このAcute:Chronic比の理論が当てはまらない選手に挙げられる特徴に、
  • 有酸素性能力(VO2max)が高い
  • 下肢の筋力が高い
ことも報告されており、これらの要素もトレーニング負荷の管理に考慮されるべきだと考えられています。
 
トレーニング負荷の研究はまだまだ新しく、
  • Acute負荷とChronic負荷の期間をどう設定するべきか
  • 側近1週間のデータ(Acute負荷)は、Chronic負荷の中に含むべきか。
  • トレーニング負荷は、総走行距離のデータを用いればいいのか、高強度運動の距離・頻度などのデータを利用するべきか。
などなど、まだまだエビデンスが固まっていない部分があります。
 
データが集めやすく研究しやすい分野なので、数年後にはこういった細かいところまで突き詰められていくことかと思います。
 
 

ツール・ド・フランスの選手はレース期間中にカーボ・ローディングする

 
ツール・ド・フランスは、23日間で21ステージを2日間の休息日のみで行い続ける自転車の最大のスポーツです。
 
4時間超/日を23日間も自転車を漕ぎ続ける訳なので、身体疲労は半端ないのは言うまでもありませんが、面白いのは、
「ツール・ド・フランス選手は、レース期間中にカーボローディングを行なっている」ということです。
 
これは、ステージ11〜19までの炭水化物摂取量(下の青棒)と体重(上の白棒)のケースレポートです。
第11~13ステージと休息日に、ロー・カーボを行なって、他の日はキープ、
最後の第18,19ステージで、ハイ・カーボを入れるという方法を取っています。
(ロー・カーボと言っても、400~600gは摂取してますが。)
 
このレースでは、第19ステージが正念場だったらしく、
他のステージではそれなりのパフォーマンスで上位を狙える位置をキープしつつ、第19ステージに向けてコンディションを整えるか。
という戦略だったそうです。
 
レース前から駆け引きは始まっているというのは、まさにこういうことなんだなと思いました。
 
 

番外編。

 
こちらは今回泊まったホステスです。
知らない人4人と同じ部屋にとまるというセキュリティーもかけらもない所に初めて泊まってました。
もちろん、貴重品は常に身につけて行動するのがかなりだるかったですね。
 
運良くパクられたのがランチボックスだけだったので、まー安かったし悪くはなかったかなという感じです。
ランチボックスに関しては、洗い物置きに置くのを決めた段階でパクられるのを覚悟したので、ほら言わんこっちゃないという感じです。
(じゃあ、自分で保管しとけってのはチャレンジ精神に欠けます。)
 
ところで、皆さんこの中に人がいるのにお気づきでしょうか。
正面のベッドで実はナイジェリア人が寝ています。
 
奇跡的に、このナイジェリア人は僕と同じ学会に参加するためにナイジェリアから来て、この同じホステルの同じ部屋に当てはめられました。
ちなみに、これでEUに来てから出会ったナイジェリア人は5人目。
他のアフリカの人には1人も合ってないのに、ナイジェリアだけ5人目。
 
次回の学会では、この謎のナイジェリア人引きのメカニズムについてもぜひ解明していただきたいものです。
 
以上です。
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