ハムストリング肉離れとランニングフォームの関係性|エビデンスレビュー
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研究概要
この研究では、ベルギーのアマチュアサッカー選手を60人集めてきています。
- 昨シーズンにハムストリングを損傷した選手30名
- 健全な選手30名
のランニングフォームを3Dモーションキャプチャーを使って解析し、その後1.5年、その選手がハムストリング を損傷したかどうかをフォローアップします。
腰痛などを持っている選手、重篤な下肢損傷の既往歴のある選手などは除外されています。
ここから、以下の2つの視点でこの2群のランニングフォームを比較していきます。
- 後向き:ハムストリング損傷がランニングフォームに影響するか。
- 前向き:ランニングフォームがハムストリング損傷のリスクに影響するか。
前向きの比較では、バイアスを避けるためコントロール群30名の間で1.5年間のフォローアップ間にハムストリング損傷を起こした選手vs起こさなかった選手で比較していきます。
結果①:ハムストリング損傷がランニングフォームに影響するか。
ハムストリング損傷の既往歴がある選手は、普通の選手に比べてランニングフォームが違うのか。
今回の研究の結果では、、、
影響ありませんでした。
これはハムストリング損傷の既往歴とランニングフォームへの影響を完全に否定するものではないので、注意が必要です。
結果②:ランニングフォームがハムストリング損傷のリスクに影響するか。
今回の研究の主な発見はこちらの前向き解析の結果になります。
元々ハムストリング損傷を起こしたことのない選手の中で、1.5年間のフォローアップの中でハムストリングを損傷した選手が4名いました。(4名vs25名)
その4名のランニングフォームと残りの25名のランニングフォームを比較した結果、以下のような違いが見られました。
- 骨盤前傾 @Back swing phase
- 体幹側屈 @Front swing phase (=支持足側への側屈)</strong>
これらのランニングフォームはハムストリング損傷のリスクになるえるとこの結果から考えられます。
骨盤前傾でp=0.045, 体幹側屈でp=0.028とそれぞれ有意差が見られました。
個人的見解
今回の研究では、ハムストリング損傷のリスクファクターとなる要素として、ランニングフォームが取り上げられました。
ハムストリング損傷のリスクファクターは、いくつもの研究が試みているものの、なかなか明確にならない難題ですが、
そんな中で、今回の研究はランニングフォームをリスクファクターとする可能性を示唆した点で面白い研究だと思います。
ただ、既往歴とランニングフォームとの関係性に関しては、明確にはなりませんでした。
ただし、この研究にもいくつかの注意点があります。
まずそもそも論ですが、 この論文が載っている「Gait & Posture」という雑誌の影響力があまり高くない、つまり信頼性にかける点です。
Scimago Jounal & Country Rankingのランキングを参考にすると、Gait & Postureの影響力はSports medicine分野で第38位なので、謎の怪しい雑誌ではないですが、トップレベルの雑誌とは言い難い感じです。
また、今回の発見であるランニングフォームがハムストリング損傷のリスクとなるデータはサンプル数が4名のデータなので、
いくら有意差が出ているらと言っても、バイアスの匂いがほんのり香ります。
あと、今回はアマチュア選手でしたが、違う対象者ならどうなるのか。
例えば、プロサッカー選手なら?ユース世代なら?
という考慮はする必要があると思います。
参考文献
Schuermans, J., Van Tiggelen, D., Palmans, T., Danneels, L., & Witvrouw, E. (2017). Deviating running kinematics and hamstring injury susceptibility in male soccer players: Cause or consequence? Gait and Posture, 57, 270–277. https://doi.org/10.1016/j.gaitpost.2017.06.268