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ここ5年間でサッカー選手の運動量はどれぐらい上がったのか

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昔に比べて、現代サッカーの質は変わって来ているとはよく言われています。

 

ちょっと昔までは、FWは守備せず攻撃に専念し、DFは攻撃せず守備に専念する時代でしたが、現代サッカーでは、

FWも前からプレスをかけ、DFも攻撃の役割を担う

というのが主流となってきていると思います。

 

そう言ったサッカーの時代の変化で、

サッカーの試合での選手の運動量は年々増えて来ている。

ということが言われています。

 

ということで今回は、

この5年間でどれぐらい運動量は上がったのか。

という話を研究結果を元に解説していこうと思います!

 

 

 

 

研究概要

今回は、イングランドの研究者数名が2016年に「International Jounal of Sports medicine」にて発表した、

 

「The evolution of physical and Technical Performance Parameters in the English Premier League」

訳:プレミアリーグにおける身体的・技術的能力パラメーターの進化

 

という論文を読み解いていきます!

 

以下のリンクより論文はダウンロードできるかと思います。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

調査方法

この論文では、

イングランド・プレミアリーグの2006/2007〜2012/2013シーズンの7年間の試合のデータを集計しています。

 

データ数は、1,036選手22,846試合分で、フル出場したフィールド選手を対象にしています。(つまり、途中出場・途中交代とGKは対象外です。)

 

 

走行距離自体よりも、ダッシュの距離が特に伸びている

この研究から得られた結果としては、

  • 7年間通して走行距離自体はあまり変化していない
  • でも、ダッシュの距離が増加した。

と言う結果になっています。

 

試合における

「総走行距離」「ダッシュとスプリントの距離」

でそれぞれ見て行きます。

 

総走行距離

 

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(Barnes, C., Archer, D. T., Hogg, B., Bush, M., & Bradley, P. S. (2014). 改

 

上のグラフは、シーズン毎での1試合の総走行距離を示したものです。

 

総走行距離は、統計上は総走行距離は有意に増加していますが、

その距離はこの5年間で200m伸びたただけです。

たったの1.02倍だけ伸びたと言う感じです。

 

個人差の分布の広さを考えれば、

総走行距離が伸びているという風には言えない。

というのが、この研究での総走行距離の結果でした。

 

 

ダッシュとスプリントの距離

 

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(Barnes, C., Archer, D. T., Hogg, B., Bush, M., & Bradley, P. S. (2014). 改)

 

一方で、ダッシュ(左)スプリント(右)は上のグラフのような結果でした。 

 

総走行距離の増加がいまいちだったのに対して、

ダッシュとスプリントは、共に大きく増加しているのが見て分かると思います。

 

具体的には、

ダッシュ(5.5m/s以上)の距離は、約1.29倍に増加しています。

スプリント(7.0m/s以上)の距離は、約1.5倍に増加しています。

 

つまり、

現代のサッカーに必要な「走れる選手」というのは、

「高いインテンシティをより繰り返せる選手」ということだと言えます。

 

 

 

選手に求められる能力の変化

ダッシュやスプリントの量が増えているということは、より解糖系のエネルギー供給が必要になってきます。

また、筋酸化による疲労への耐性も求められるということは考えられます。

 

サッカーが時代によって変わりゆく中で、

選手に求められる能力も常に変わり続けているということがこの結果から言えるでしょう。

 

正確な数字↓

 

2006/2007

2012/2013

総走行距離

10679±956m

10881±885m

ダッシュ距離(5.5m/s 以上)

889±299m

1151±337m

スプリント距離(7.0m/s 以上)

232±114m

350±139m

(Barnes, C., Archer, D. T., Hogg, B., Bush, M., & Bradley, P. S. (2014). 改)

 

 

 

現代サッカーはメリハリが強くなっている

この論文で明らかにされたの距離だけでなく、

スプリントに前後にどのような動きをしていたか。

ということも変わって来ていることを明らかにしています。

 

どういうことかと言うと、

  •  スタンディングやウォークから一気に加速してスプリントをした場合 

  =突発的なスプリント

  • ダッシュしている状態からスピードを上げてスプリントした場合

  =継続的なスプリント

と、スプリントをそれまでの行動で2つに分けた時に、それぞれの頻度に違いがあったと言うことです。

 

 

突発的なスプリントの回数が増えた

 

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(Barnes, C., Archer, D. T., Hogg, B., Bush, M., & Bradley, P. S. (2014). 改)

 

上のグラフは、

  • 横軸が、1試合に起こるスプリントの回数
  • 縦軸が、その内の突発的なスプリントの割合

の分布示したグラフです。

 

まず、スプリントの回数は31回から57回に約2倍に増加していて、

その内の突発的なスプリントの割合は、34%から47%に増加しています。

 

つまり、シンプルにスプリントの数が増えただけではなく、

「スプリント→止まって→スプリント→歩いて→スプリント」

というようにメリハリをつけたスプリントが増えてきたということが言えます。

 

 

継続的に走る選手が減った

もう一点、注目する点として、選手の走り方が統一化されてきた。と言う点です。

 

グラフを見てもらうと、5年前は細長く分布していているのに対して、

近年の分布は横に太く縦に短くなっていると思います。

 

 

これはどういうことかと言うと、

  • 横に太くなった=よりスプリントを多く繰り返せる選手が増えてきた
  • 縦に短くなった=より継続的に走る選手は減っている

と言うことを意味しています。

 

2006年頃の継続的なスプリントが中心の選手とは恐らく、攻守に渡って常にフィールドを前後していたような選手だと思われます。

 

2006年頃は、10回に1回しか突発的にスプリントしない選手もいましたが、2012年ではそのような選手は減り、

少なくとも3回に1回は突発的スプリントになっています。

 

つまり、長い距離をランニングで動き回る選手は減り、

ここぞの時にスプリントを繰り返す選手が増えている傾向にある

ということが言えます。

 

 

まとめ

今回は、イングランド・プレミアリーグでの研究を元に、

「サッカーに求められる運動量のここ5年間の変化」について述べてきました。

 

この研究では、

  • この5年間では、総走行距離はあまり変わってない。
  • ダッシュ・スプリントをより多く繰り返すようになった。
  • コートを走り回るような選手は減ってきた。

ということが主に明らかにされました。

 

これは、プレミアリーグを対象とした研究ですが、

多くのリーグでも同じような傾向にあるのではないか。

と個人的には考えています。

 

サッカーは戦術の変化によって、よりスペースが少なく、よりフリーの時間が短くなってきていると思います。

 

そういった、トレーニング指導も時代の変化に対応していく必要があるのではなかと思う研究結果でした。

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