素走りで筋力増加を感じたのは幻覚だったのか。【"素走り=悪"は本当?|前編】
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トレーニング科学が発展したこのご時世。
部活などで昔からやっていた「素走り」は、多くのスポーツに求められる運動から外れるため効率的ではなく、
むしろ、間欠的トレーニングを取り入れるべきだということは、徐々にではありますが、一般的になりつつあると思います。
ですが、「素走り」で足腰がついたと感じている人はいる人は実際にいると思います。
そう行った意見がある以上、
- なぜ「素走り」を通じて強くなれたと感じられたのか。
- 本当に「素走り」が有効な方法になることはないのか。
ということは、トレーニング科学が反発なく、より広く認められていくためには外してはいけない部分だと思います。
前編では、
- スポーツに必要な疲労への耐性とは何なのか。
- なぜ、間欠性トレーニングが良いとされるのか。
という話をしてきました。その話は下の記事をどうぞ。
ということで今回、中編では、
- なぜ、素走りをして筋力がついたと感じたのか。
- ここでいう「筋力」とはなんなんだ。
という話をしていきます!
素走りで足腰が鍛えられた俺が間違ってるってのか。
どれだけ科学が「素走りのような有酸素トレーニングで筋力がつくことはない。」と言っても、素走りをして筋力がついたという経験はが突然なくなるわけではありません。
では、なぜ素走りなどで走りこんだら筋力がつくように感じたのか。
これは、「筋力」という言葉が、科学と経験則の間で合致していないことが問題だと思います。
トレーニング科学と現場のコーチの「筋力」の意味
トレーニング科学の言う「筋力が足りない」は、「最大パワー」つまり、1回に出せる最大の力が足りない状態です。
一方、スポーツの現場で「筋力が足りない」と言うと、おそらくこれは一定の筋力を続けて出す力がない状態だと思います。
例えば、最高球速は140km/hだけど、140km/hでは30球しか投げられない先発投手がいたとします。
トレーニング科学の言う「筋力」をつけると、最高球速は150km/hになるけど、150km/hのボールは30球しか投げれないことには変わりありません。
(むしろ、減る可能性すらあります。)
一方、実際にこの投手が必要としている筋力は、まずは140km/hでもいいから50球、60球と投げられる力の方だと思います。
(クルーザーに回せばいいとかあるかもしれませんが、一旦それはなしでお願いします。)
筋力と一言に言っても、
- 最大の力を表す「最大パワー」
- 繰り返し力を出し続ける「筋持久力」
は、分けて考えられる必要があります。
確かに最大パワーを鍛えて150km/hで投げられるようになれば、140km/hに力を落として60球とか投げられるようになるかもしれませんが、
筋持久力を狙って鍛えた場合より、140km/h×60球にたどり着く時間は遥かにに長くなってしまいます。
素走りが「筋持久力」を上げることは考えられる。
では話を戻して、なぜ素走りをすると筋力があがるように感じたのか。
これは、これの言う「筋力」が「筋持久力」なら素走りで鍛えられる可能性はあります。
というのも、筋持久力には素走りで鍛えられる有酸素性の能力が関係しているからです。
筋持久力を高めるためには「筋の酸化」への耐性が強くなることが重要になります。
解糖系のエネルギー供給を利用することで、乳酸が溜まり乳酸が筋肉のpHを下げます。これがパフォーマンスを下げる原因となります。
これに対して筋の酸化を緩和する能力が「筋緩衝能」という能力で、筋緩衝能が高いと筋の酸化が緩和され、繰り返しのスプリントなどが可能になります。
この筋緩衝能を決める要素の1つが有酸素性の能力で、素走りは有酸素能力を上げるというアプローチから筋持久力を高めていたことが考えられます。
つまり、「素走りによって筋力がついた。」とは、
素走りによって有酸素能力が高まり、その結果、筋持久力が高まることで、よりパフォーマンスが高まった。
という風な意味合いであったと解釈するのが正しいのではないかと思います。
レジスタンストレーニングで、60%1RMの強度で20〜30回ぐらいする方法が「筋持久力」を鍛える方法だろ!どこに有酸素の要素があるんだよ!って思った方もいると思いますが、
筋持久力を成す要素にもいくつかあって、レジスタンストレーニングの場合は主にカルノシンが増加することで、その抗酸化作用が筋持久力を助けると言われています。しかし、筋持久力への他の要素からのアプローチはレジスタンストレーニングでは得られにくいと考えられます。
まとめ
今回はの内容は以下のような感じでした。
- そもそも「筋力」という言葉の解釈が違う
- 素走りによって筋力がついた。と感じる理由は「筋持久力」
- 筋持久力なら素走りで伸ばすことは考えられる。
素走り行うことで有酸素性能力は確かに向上するし、それが筋持久力を向上させることに繋がることは十分に考えられます。
ただここで忘れてはいけないのが、間欠性トレーニングでも有酸素性の能力は伸びるし、間欠性トレーニングの方が実際に必要とされる運動を直接的に鍛えられるということです。
素走りでは遠回しなトレーニング効果になってしまうのも間違いないとうことです。
ただ、遠回しのトレーニング効果がたまには必要になったりすることは本当にないの?とは思ったりしないでしょうか?
後編では、そう行った話をして結論に持っていこうと思います!