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FIFA公式プログラム「FIFA11+」の怪我予防効果【メタ解析】

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近年、怪我予防プログラムの研究はかなり進んできました。
 
そんな中で、FIFAの医療研究組織「F-MARC」が予防プログラムを出しているのはご存知でしょうか。
 
FIFAは、かなり前から怪我に関する研究にも力を入れており、2003年に「FIFA11」、2006年には改訂版の「FIFA11+」という予防プログラムを出しています。
この予防プログラムは、ウォーミングアップとして20分程度で取り入れるようになっており、FIFAが推奨している怪我予防プログラムです。
 
以下のリンクから「FIFA11+」プログラムは参照ください。
 
というわけで今回は、
F-MARCの予防プログラムの効果についての論文をレビューしていきます!
 
 
 
 
 

論文概要

今回は、2016年にSports Medecineに掲載された、
 
「How Effective are F-MARC Injury Prevention Programs for Soccer Players? A Systematic Review and Meta-Analysis」
 
という研究をレビューしていきます。
 
 

論文デザイン 

システマティックレビューによる研究です。
 
「FIFA11」または「FIFA11+」を取り入れた時の怪我のリスクを記録している論文を対象にメタ解析を行い、これらの予防プログラムの効果を検討しています。
 
対象とする研究は9個で、ここでは性別、年齢、スキルレベル、スポーツは除外の条件とはなっていません。
 
 

「FIFA11」「FIFA11+」を取り入れた際の予防効果

(上:怪我全体、下:下肢の怪我)
 
では、F-MARCが発行する予防プログラムによってどれほどの予防効果が得られたのか。
 
このグラフは、「FIFA11」または「FIFA11+」のどちらかを取り入れた際の効果を示しています。
縦線より左に行けば行くほど予防効果が高かったことを意味します。
 
「FIFA11」または「FIFA11+」を取り入れると、
  • 怪我全体では、怪我のリスクが23%有意に減少(IRR: 0.771, 95%CI:0.647-0.918)
  • 下肢の怪我では、怪我のリスクが24%有意に減少(IRR 0.762, 95%CI:0.621-0.935)
してました。
 
この結果から、これらのプログラムを取り入れることで、一般的なウォーミングアップをするのに比べて怪我のリスクが抑えられると言えます。
 
IRRは「Injury Risk Ratio」で、「介入群の怪我率 ÷ コントロール群の怪我率」で計算します。
一方で、RRは「Risk Ratio」で、「怪我の数 ÷ プレー時間 × 1000」で1000時間あたりのリスクを表します。
 
 

「FIFA11+」の方がやっぱり優れている?

(上:怪我全体、下:下肢の怪我、グラフ上半分:FIFA11+、グラフ下半分:FIFA11)
 
今度は、「FIFA11」と「FIFA11+」の間での効果の差を比較しています。
 
怪我全体に対する効果では、
  • FIFA11では、有意な効果は見られず(IRR: 0.923, 95%CI:0.786-1.083)
  • FIFA11+では、怪我のリスクが35%有意に減少(IRR: 0.654, 95%CI:0.536-0.798)
しました。
 
 
下肢の怪我に対する効果では、
  • FIFA11では、有意な効果は見られず(IRR: 0.961, 95%CI:0.776-1.191)
  • FIFA11+では、怪我のリスクが39%有意に減少(IRR: 0.612, 95%CI:0.475-0.788)
しました。
 
 

筆者の考察

この結果では、FIFA11では効果がなく、FIFA11+ではかなりの予防効果が見られていると思います。
 
この結果に対する筆者の考察では、
  • FIFA11では量・強度が十分でなかったのに加えて、
  • 毎トレーニング前に必要性を説明していなかったため、履行率が低かった
ことを理由に挙げています。
 
実際に、予防プログラムを週5-6回行った研究(Grooms, D. R. et al. 2013)では、下肢の怪我のリスクを82%減少できたと報告しているの対して、
履行率が不十分であった研究(Hammes, D. et al. 2015)では、有意な差はないという結果でした。
 
 

まとめ

今回は、F-MARCの予防プログラムによる効果について論文をレビューしていきました。
  • 予防的プログラムをと入れること自体の効果は明らかにある。
  • FIFA11+プログラムの方が量・強度が多く、効果が高いと考えられる。
  • 効果を得るためには、毎回取り入れることが重要だと考えられる。
 
怪我の予防についての研究は、近年かなり盛んになってきていますが、
一方で、まだまだ研究の余地がある分野です。
 
今後も、新たなアップデートはあるはずなので、最新の情報をキャッチするしておくことは重要になるんじゃないかと思います!
 
 
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参考文献

  • Al Attar, W. S. A., Soomro, N., Pappas, E., Sinclair, P. J., & Sanders, R. H. (2016). How effective are F-MARC injury prevention programs for soccer players? A systematic review and meta-analysis. Sports medicine, 46(2), 205-217.
  • Hammes, D., Aus der Fünten, K., Kaiser, S., Frisen, E., Bizzini, M., & Meyer, T. (2015). Injury prevention in male veteran football players–a randomised controlled trial using “FIFA 11+”. Journal of sports sciences, 33(9), 873-881.
  • Grooms, D. R., Palmer, T., Onate, J. A., Myer, G. D., & Grindstaff, T. (2013). Soccer-specific warm-up and lower extremity injury rates in collegiate male soccer players. Journal of athletic training, 48(6), 782-789.
 
 
 
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