スポーツには間欠性トレーニングがベストなワケ【"素走り=悪"は本当?|前編】
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近頃は、スポーツ科学・トレーニング科学の発展によって、「素走り」は多くのスポーツにおいて効率的ではないことが認知されるようになってきました。
例えばサッカーでは、数秒程度の瞬発的なスプリントを繰り返すことがスポーツの特徴的な運動になります。
なので、3kmや5kmを続けて走るような素走りはスポーツの本質から外れて、あまり効果的ではないということは、一般のスポーツ現場でも徐々にではありますが、認知されるようになってきているのではないかと思います。
メインのトレーニングとして、素走りを取り入れることは効率的ではないということは科学的に正しいのにしても、
「何が科学だ、俺は選手時代にめちゃくちゃ走らされたけど、それで足腰は鍛わったぞ。」と言う人もいると思います。
本当に「素走り=悪」として、スポーツの世界から素走りを完全に廃止してしまっていいのか。
トレーニング種目の一環として素走りは、本当に1ミリたりとも効果はないのか。
と思う人もいるのではないでしょうか。
というわけで今後全3編に渡って、
素走りが与えるかもしれないメリットは実はあるんじゃないか。
という可能性を探っていこうと思います。
前編は、間欠的トレーニングが原則は適切だと考えられる理由からしていきます。
多くのスポーツで、瞬発的な運動が求められるのは共通ですが、スプリント1回の時間やスプリントの頻度は球技によって変わってくると思います。ここでは、サッカーを例に挙げて解説していこうと思います。
ちなみに、サッカーの試合において最も頻繁に起きる運動様式は、4~7秒間のランニング・スプリントだと研究から報告されています。これを基準に皆さんのスポーツと比較してもらえればと思います。
素走りは本当にスポーツのパフォーマンスに影響しないのか。
仮に、「素走り」と言われるものが最低でも75秒以上を単調に走り続けるようなトレーニングなら、それは主に有酸素性のエネルギー供給系を鍛えていることになります。
一方で、サッカーの試合では主に4~7秒程度のランニングが主になり、75秒間連続で走り続けるというシチュエーションはあまりありません。
むしろ、ATP-PCr系と解糖系のエネルギー供給系という、いわゆる無酸素性のエネルギーが必要とされます。
これが、サッカーには素走りは必要ないと言われる所以です。
ですが、本当にサッカーには有酸素性のエネルギー供給能力は全く必要ないのか。
その答えは、
有酸素性の運動はほとんど必要ないが、有酸素性のエネルギー供給能力が必要
という話になります。
これはどういうことかと言うと、サッカーの試合中に起こる疲労の回復に有酸素性エネルギー供給能力が必要になる。ということです。
サッカーの試合に起こる主な疲労に、「クレアチンリン酸の枯渇」と「筋の酸化」という2つがあります。
これらの疲労は、確かに無酸素性のエネルギー供給を利用することで起こりますが、軽減するためには、酸素をより多く筋肉に取り込むことが求められます。
そこに有酸素性のエネルギー供給能力が必要になります。
なので、サッカーに有酸素性の能力が必要ないかと言われれば、サッカーにも有酸素性の能力は必要と言う答えになります。
でも、間欠的トレーニングでも有酸素性能力は鍛わる
じゃあ、素走りはやっぱり必要じゃないか。と結論づけることはまだ早いです。
たしかに、有酸素性の能力はサッカーの試合の疲労を軽減するために求められますが、有酸素性トレーニングは「間欠性トレーニング」で十分に鍛えられるからです。
間欠性トレーニングとは、間が欠けている、つまり、休息が足りない状態で反復するトレーニングのことを言います。
10秒間隔でのダッシュトレーニングなど、まさしく間欠性トレーニングになります。
間欠性トレーニングでは無酸素性の運度を行うんだから、有酸素性エネルギーは必要ないのでは?
と思うかもしれませんがそういうわけではなく、次のダッシュに向けて疲労を軽減しようと、レスト中ぜぇぜぇ言っている間、私たちの身体は全力で酸素を筋肉に取り込んでいます。
なので、間欠性トレーニングでも有酸素能力を十分に鍛えられるわけです。
素走りは筋肉を分解する?
素走りのネガティブな点を話す時に忘れてはならないのが、
運動をすると起こる、「筋肉を分解する作用」と「筋肉を合成する作用」のバランスです。
運動を行なってより多くのエネルギーが必要になると、コルチゾールやアドレナリンなどのホルモンが、筋肉からエネルギーを作り出そうとする糖新生という反応を起こします。
一方、運動後には筋肉が受けた損傷を修復しようと、テストステロン、成長ホルモン、インスリン、IGFなど、筋肉を合成するホルモンが分泌されます。
運動中に出る筋肉を分解するホルモンは、素走りのような有酸素性トレーニングの方がより多く分泌されますが、
運動後に出る筋肉を合成するホルモンは、間欠性トレーニングのような強度の高い運動でより多く分泌されます。(究極は筋トレです。)
こう言った理由からサッカーのようなスポーツでは、素走りよりも間欠性トレーニングの方が適していると言えます。
マラソン選手は圧倒的な運動量を誇っているにも関わらず筋肉があまりないのは、こう言った筋肉の異化作用が同化作用に対して優位になる影響です。
マラソン選手の場合は筋肉の速筋線維はあまり必要ではないため、筋肉の異化作用をうまく使いながら速筋線維を削り、遅筋線維のみを残すことが重要になります。
前編のまとめ
ということで、前編では、
- スポーツには、無酸素の能力・有酸素の能力ともに必要になる
- なぜ素走りが多くのスポーツに適しておらず、
- 間欠性トレーニングは適していると言われるのか。
について解説していきました。
ですが、「素走りが筋肉を落とす?俺は素走りで筋力ついたぞ!」と感じている人は実際いるわけです。
中編では、
- 素走りを通して筋力がついた!と感じた理由
- そもそも、その「筋力」って何?
という話をしていきます!