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素走りが有効な手段となることは金輪際ないのか。【素走り=悪?|後編】

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このシリーズの前編と中編では、
  • 間欠性トレーニングがスポーツに必要な能力をダイレクトに鍛えられる
  • 素走りでも筋持久力なら鍛えられる。ただ効率的ではない
という話をしてきました。
 
やはり、多くのスポーツにとって、間欠性トレーニングがメインのトレーニングになるべきであることは、間違いありません。
 
ですが、
場合によっては素走りの方が有効的な方法として利用できる可能性はないのか。
と聞かれると、ないとは断言することはできるのでしょうか。
 
ということで、最後となる今回・後編では、
  • 素走りが有効的な方法となる可能性はないのか。
  • ついでに、素走りでメンタルが鍛わった!は幻想か。
という話をしていきます!
 
前編と中編もぜひ一読ください。
 
 

素走りが間欠的トレーニングより優れる点は何か。

素走りが有効となる場面は本当に1ミリたりともないのか。
これは、素走りのような有酸素トレーニングのメリットを考えていくと見つかるかもしれません。
 

有酸素性の能力を集中的にトレーニングできる

素走りでは有酸素性エネルギー供給が集中的に鍛えられることになります。
 
より多く酸素を筋肉に取り込めるということは筋緩衝能が高く筋持久力が高いということになります。
なので、筋持久力が必要な人は素走りを取り入れて、有酸素性のエネルギー供給を鍛えることは重要になりそうです。
 
しかし、残念ながら素走りには筋肉の分解作用を優位にしてしまうデメリットがあります。
 
前編で詳しく説明しましたが、運動中には筋肉を分解するホルモンが分泌されます。一方で、運動後には筋肉を合成しようとするホルモンが筋肉にかかった負荷に応じて出てきます。
 
素走りは、間欠的トレーニングより運動をしている時間が長くなるので、より多くのエネルギーを必要とします。つまり、素走りはより多くの筋肉を分解してしまいます。
なのに、筋肉への負荷自体はそれほど高くないので、運動後の筋肉合成作用はあまり強く出ません。
 
つまり、素走りを取り入れることで筋肉の分解作用>合成作用となってしまい、筋肉増強ができなくなってしまうのです。
筋持久力が高まっても、元々の最大筋力が下がってしまっては意味がないので、この点についてはメリットにはなり得なさそうです。
 
ちなみに。
有酸素トレーニングをすれば確実に筋肉を分解するホルモンは多く分泌されますが、1週間は長距離走しかしないというような長距離オンリー合宿、オーバートレーニング症候群となるような過剰な練習量、など特殊な例でない限り、顕著に筋肉が落ちるに至る可能性は低いです。そこまでではないのでご安心を。

より多くのトレーニング量をこなせる

間欠的トレーニングは、確かに有酸素性能力も十分に鍛えられ筋肉への負荷も高くできるので筋肉の合成作用も促せます。
ただ、間欠性トレーニングが効果は十分に追い込めたらの話です。
 
間欠的トレーニングとは、「全力に近い運動」×「何度も繰り返す」で高い負荷を保つことができます。
つまり、全力ダッシュだと5回しか続けられない場合は負荷が保ててませんし、だからと言ってバテてた状態で繰り返しても同じく意味はなくなります。
 
つまり、間欠的トレーニングは筋持久力がないと始まらないトレーニングということです。
 
一方、素走りにはそう言ったことはありません。
バテててもいいから頑張って走れば、ゼェゼェ言った数だけ有酸素性の能力がつきます。
 
つまり、間欠性トレーニングができない人には、素走りしか選択肢がないので、消去法的に、素走りをすることが有効な手段となり得るということです!
 
 

じゃあどこなら素走りは有効に使えるの?

じゃあ、具体的にどういったシチュエーションで素走りが有効なのかというと、一般的な中学の部活がその例だと思います。
 
小学生や中学生は、全力で走ってもそもそも筋肉への負担がかかるほどの最大筋力もない、その上、有酸素性の能力も中学生の終わりにかけて上がっていくので、回数をこなすにも未熟です。
なので、間欠性トレーニングを取り入れても本当に負荷足りてるの?という疑問が出ます。
 
この世代にトレーニングをするなら、有酸素性トレーニングをしっかりしてまずは筋持久力の土台をしっかり作ってから。という考え方が正しくなるので、
素走りも一つの有効な手段になりえると言えます!
 
ちなみに。
筋肉の負荷への耐性は、成長してもあまり変わりません。小中学性ではあまり肉離れは起きないが、高校生、大学生、プロとなるにつれて肉離れが増えるのは、筋の耐性はあまり変わらないけど、最大筋力が増えて負荷が上がるからです。
 

メンタルは本当に鍛えられるのか、それは幻か。

最後に、この素走りの話題で忘れてはいけないのが「素走りによってメンタルは鍛わるのか問題」です。
素走りはもちろん辛いトレーニングで、それも辛い状態が数十分と続くわけなので、それによって、ストレス耐性、つまりメンタルが鍛えられる。という説です。
 
メンタルは、科学的に言い換えると「中枢性疲労への耐性」になると思います。
サラリーマンの「疲れたー」というやつ、選手なら「プレッシャーに晒される疲労感」のような脳の疲労が中枢性疲労なのですが、
これは主にコルチゾールというストレスホルモンが過剰に分泌されることで起こります。
 
このコルチゾールは間欠性トレーニングでも分泌されるのですが、有酸素トレーニングの方が長時間続くので、最終的によりコルチゾールに曝されることになります。
 
コルチゾールはストレスホルモン。と言うと害しかないように聞こえますが、筋肉が損傷するから超回復するように、脳もストレスに曝されるから超回復します。
つまりは、有酸素トレーニングを行うことで中枢性疲労に強い脳を作り上げることができる。
この可能性は十分に考えられます。
 
ですが、これに関しては可能性があるとしか言えません。
これまでの研究では、有酸素運動が中枢性疲労の耐性を上げるほどの量が出ているのか。については明らかにされていないところではあるので、現状なんとも言えません。
 
ただ、素走りがメンタルを鍛えるわ訳がない!てか、メンタルってなんやねん。という会話はナンセンスな気がします。
 
個人的な意見を言えば、素走りがメンタルを鍛えるのは一理あると思っています。
運動の身体的ストレスも、プレッシャーの精神的ストレスも、ともにコルチゾールによって我々は感じているので、これらは関係していると個人的には思っています。これも可能性です。
 
 

まとめ

と言うわけで、全3編に渡っての内容はこんな感じでした。
  • 間欠性トレーニングがスポーツに適してることは確か
  • だが、素走りで筋持久力を高めることは一応可能だと考えられる。
  • それでも、素走りは間欠性トレーニングに比べれば非効率的ではある。
  • しかし、間欠性トレーニングでは負荷をあげられない選手は素走りを取り入れるメリットはあるかもしれない
  • 素走りで中枢性疲労への耐性を上げる可能性は考えられる。
 
いくら非効率的だからと言っても「素走り=悪」「メンタル?幻想だ。」と頭ごなしに否定してしまうのは勿体無いのではないか。と思います。
 
間欠性トレーニングが多くのスポーツに最も適しているのは、確かだと自分も思っています。
でも。素走りも効果的に取り入れられる可能性はあるし、メンタルも中枢性疲労のことだとすると、大いにスポーツに関係する話です。
 
加えて、素走りが有効に利用できるのは小・中学生の年代なので、
その指導者にも向かっても情報発信していると考えると、「素走り=悪」というような一括りな表現は如何なものなのかな。と思ってしまいます。
 
トレーニングに絶対解はないので、いろんな視野を取り入れて自分のシチュエーションに合ったものを取り入れるのが大事だと思います!
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