下肢の筋力はハムストリング肉離れのリスク因子ではないと!?
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皆さんこんにちは。
ハムストリング損傷のリスクファクターについてのエビデンスは、
実際なかなかまとめっていないのが現状です。
今年、ハムストリング損傷のリスクファクターを包括的にまとめたシステマティックレビューが2013年に出ていまして、
それ以降、各リスクファクターを細かく検討していこうというのが時の流れです。
そんな中で、一番注目されていたリスクファクターに等速性筋力と筋力のインバランスがあります。
そしてついに、筋力とハムストリング損傷のリスクとの関係性について最新のシステマティックレビューが出ました。
というわけで今回は、
下肢の等速性筋力とハムストリング損傷のリスクファクターの関係性についての論文をレビューしていきます!
研究概要
今回紹介するのは上の論文です。
「Isokinetic strength assessment offers limited predictive validity for detecting risk of future hamstring strain in sport: a systematic review and meta-analyis」
この研究では、
ハムストリング、大腿四頭筋、股関節屈曲筋群
と
ハムストリング損傷のリスク
との関係性を研究している前向き研究を集めてきて、メタ解析・システマティックレビューを行っています。
システマティックレビューとは最もエビデンスレベルの高い研究デザインであり最も信頼性の高い研究と言えます。
結果
早速結果から参ります。
この研究では、
-
ハムストリング、大腿四頭筋、股関節屈曲筋群
-
様々な角速度
-
コンセントリック、エキセントリック
の様々な組み合わせでの筋力を測定した研究を集めています。
メタ解析の結果、ハムストリング損傷のリスクとの有意な関係性が見られたのは、
60°毎秒でのエキセントリックのハムストリング筋力のみでした。
また60度毎秒でのエキセントリックのエキセントリック筋力に関しても、ハムストリング損傷リスクとの小さい関係性が見られたに限られました。
具体的には SMD値を見てもらうとわかると思いますが、
絶対筋力と相対筋力のSMD値が-0.16と-0.17とかなり小さい値になっています。
つまりこの結果から、筋力でハムストリング損傷のリスクを評価することは難しいということが示唆されます。
SMD値とは、Standerdised Mean Difference といい、関係性の強さを表しています。0.2以下の場合は小さい影響という風に定義されます。
現状エビデンスレベルの評価
この研究では、どこに有意差だったのかだけではなく、現場揃っているエビデンスレベルについても検討しています。
この研究では、これまで出ているエビデンスの質と研究結果の一致度から、以下の5段階で現場のエビデンスレベルを評価しました。
-
Strong
-
Moderate
-
Limited
-
Conflicting
-
No evidence
本来研究では、効果がなかったことを証明することはほぼ不可能です。しかしこの研究ではこの方法を用いて、関係性がない可能性を検討しています。
エビデンスレベルの評価結果
以下の項目が効果がないということで意見が一致している項目と評価されました。
-
ハムストリングでは、エキセントリックでの遅い角速度での収縮。
-
大腿四頭筋ではコンセントリックエキセントリック含めた全角速度
-
HQ 比ではコンセントリック同士、エキセントリック同士の比較における全角速度。
-
HH 比ではコンセントリックでの速い角速度での収縮。
一方でエビデンスが十分にない項目は以下が挙げられました。
-
ハムストリングでは、エキセントリック収縮の 30°毎秒と240°毎秒
-
HH比は、コンセントリックでの速い角速度での収縮とエキセントリックの全角速度
また、以下の項目が研究によって意見が分かれている項目でした。
-
HQ 比のファンクショナルでの全角速度
つまり、現状のエビデンスでハムストリング損傷のリスクとの関係性が示唆される項目は、
ファンクショナルなHQ比のみということが明らかにされました。
ファンクショナルなHQ比とは、ランニング動作のLate Swing Phaseで起こる、大腿四頭筋のコンセントリック収縮とハムストリングのエキセントリック収縮との筋力の比率です。
個人的見解
今回の研究結果では、ハムストリング大腿四頭筋の筋力はハムストリングの損傷リスクとの関係性はないという風にされました。
しかし、だからといって筋力がハムストリングの肉離れに全く関係ないとするのは、個人的にはまだ早いんじゃないのかなという風に思います。
というのも、ハムストリングの肉離れと一言に言っても様々な切れ方がありますが、
ハムストリング肉離れの種類は研究では考慮されていないからです。
多くの研究では、ハムストリング損傷の典型的な受傷機転となるランニング時のLate Swing Phaseを基準に考えられています。
ファンクショナルな HQ比がその典型的な例です。
ただいくつかの研究では筋力とハムストリング損傷のリスクとの関係性が示唆されているように、ある種のハムストリング肉離れにはある種の筋力が関係している。
というのが順当なんじゃないかなという風に思います。
残念ながら、研究ではハムストリングの切れ方については分類されないので、そういったことを研究で考察するのは難しいというのがあります。
なので、ハムストリング損傷と筋力が全く関係ないというふうに結論付けるのはどうかなという風に思います。
ただ、これは私の個人的な意見なので信じるか信じないかはあなた次第です。
###まとめ
以上が最新のシステマティックレビューによる筋力とハムストリング損傷のリスクとの関係性についてでした。
研究結果としては、筋力とハムストリング損傷は関係ない。という結論でしたが、
個人的にはどうなのかなと言う話でした。
ハムストリング肉離れの予防の研究は、進んでいるようでなかなか進み切らないところがあります。
ノルディックハムによるハムストリング損傷の予防効果など、ポジティブな効果すでに見られていたりもします。
ノルディックハムの予防効果についての記事は以下を是非是非ご覧下さい。
以上です!
参考文献
- Green, B., Bourne, M. N., & Pizzari, T. (2018). Isokinetic strength assessment offers limited predictive validity for detecting risk of future hamstring strain in sport: a systematic review and meta-analysis. British Journal of Sports Medicine, 52(5), 329–336. https://doi.org/10.1136/bjsports-2017-098101