全身持久力を決めるVO2max(最大酸素摂取量)とは?
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市民マラソンも最近は多くの人が参加するようになりました。
そんなマラソンなどの長距離競技に必要な能力は、いうまでもなく全身持久力です。
全身持久力とは、運動をより長く継続して行う能力のことで、
有酸素性のエネルギーをどれだけ効率的に利用できるか。ということが能力を決める鍵になります。
そして、有酸素エネルギーを利用する能力を決めるのが、
「VO2max」、日本語では「最大酸素摂取量」
です。
今回は、そんなVO2maxについて解説していきます。
その前に酸素摂取量とは。
最大酸素摂取量の前に、一旦「最大」を無視して「酸素摂取量」の意味を解説します。
酸素摂取量と有酸素性エネルギーの関係
私たちは、主に酸素を使って作り出される有酸素性エネルギーで生きています。
酸素を使わずにエネルギーを作られる無酸素性エネルギーというのもあるのですが、こちらは平常時、ほとんど使っていません。
有酸素エネルギーを作り出すためには呼吸をして、酸素を取り込みます。
この時に、取り込んだ酸素の量を「酸素摂取量」といいます。
単純に生きていくのにもエネルギーは必要ですが、運動をするとより多くのエネルギーが必要になります。
なので、より多くの有酸素エネルギーを作り出すために、より多くの酸素を体内に取り込みます。
この時には、「酸素摂取量が上がる」と表現することになります。
運動中に酸素摂取量がどのように増えるか。
運動中にはより多くの酸素が必要なので、酸素摂取量が多くなる言うということでした。
では、運動をするとどのように酸素摂取量は増加するのか。
酸素摂取量は、運動の強度で決まります。
例えば、普通にランニングすると100の酸素が必要だったとします。
なら、その80%のスピードで走れば80の酸素が必要になります。
逆に、その120%のスピードで走れば120の酸素が必要になります。
このように、酸素摂取量は基本的には運動強度にほぼ比例して上昇・下降します。
急には多くの酸素を使えない
しかし、突然100のエネルギーが必要なランニングを始めても、100分の酸素は摂取できません。
必要な酸素は100なのに、突然には100の酸素は摂取できないのです。
このように、最初の1分間は40、2分間たつとは70、3分経つと90、4分経ってやっと100というように、酸素摂取量は徐々に上昇していきます。
酸素摂取量の限界:「最大酸素摂取量」
ここまでは、「酸素摂取量」の話でした。
酸素摂取量は運動後徐々に上がり、運動の強度を120%上げると酸素摂取量も比例して120%に上がるということでした。
ですが、酸素摂取量はどこまでも上がっていくわけではなく、限界があります。
この最大で摂取できる酸素の限界を「最大酸素摂取量」と言います。
例えば、最大酸素摂取量が150の人は、普通のランニングの150%のスピードまでスピードを上げると酸素の摂取量が頭打ちになり、
160%、170%とスピードを上げても酸素摂取量は150以上にはなりません。
このように、酸素摂取量は徐々に上がり、150までいったら頭打ちになります。
運動終了後にもEPOCというものの影響で酸素摂取量はすぐに落ちません。
詳しくは下の記事で。
なぜ運動後も息切れするのか?「酸素借とEPOC」を分かりやすく解説 - トレーニング Univ.
ですが、160%、170%にランニングスピードを上げられないのかというと、実は、余裕で150%以上に運動強度を上げられます。
つまり、有酸素性エネルギーが足りなくても運動できるのです。
有酸素性エンルギーが足りない部分はどうするの?
では、この有酸素性エネルギーが足りない時のエネルギーはどうしているのか。
そんな時に使うのが無酸素性エネルギーです。
無酸素性エネルギーは日頃はほとんど使いませんが、激しい運動をして有酸素エネルギーでは間に合わない時に代わりに補ってくれます。
なので、無酸素性エネルギーは激しい運動を行う時には限って大活躍します。
200のエネルギーが必要な運動を行った時、黒枠の部分のエネルギーをなんとか作り出さないといけません。
運動開始してすぐは、有酸素エネルギーがまだ上がりきっていないので、序盤は多くを無酸素性エネルギーに頼りますが、徐々に頼る量が少なくなっていきます。
逆に、150もエネルギーが必要ない運動をする場合は運動開始の序盤のみ無酸素性エネルギーを使い、後はほぼ頼らずに運動できるということです。
なぜ、最大酸素摂取量が多いと全身持久力が高くなるのか。
では、なぜ最大酸素摂取量が高い方が全身持久力が優れているのか。
有酸素性エネルギーで足りないからといっても、無酸素性エネルギーにいつまでも頼れるわけではありません。
数分程度の運動なら無酸素性のエネルギーに大いに頼っても問題ありませんが、
それ以上運動を続けると、無酸素性エネルギーはなくなってしまいます。
なので、マラソンなどの長い時間続けて行う競技では、いかに有酸素エネルギーを多く作り出せるかに勝負がかかっているのです。
つまりは、最大酸素摂取量の大小が重要になって来ると言うわけです。
マラソンの結果の50%は最大酸素摂取量で説明できる。
とある研究によると、マラソンのタイムは50%が最大酸素摂取量で決まると言われています。
これはどういうことかと言うと、
マラソンのタイムにはその日のモチベーションももちろん関わってきますが、それがタイムに対して10%の影響を及ぼすと仮定します。
その時に、自分より最大酸素摂取量が1.1倍多いA選手にモチベーションだけでついていこうと思うと、A選手より1.5倍高いモチベーションで挑まないといけないわけです。
最大酸素摂取量を1.1倍にするのと、モチベーションを1.5倍にするのはどっちが難しいが分かりませんが、
競技レベルが上がるにつれてモチベーションによる差は小さくなるので、主に最大酸素摂取量の戦いになります。
まとめ
今回は、最大酸素摂取量の解説をしてきました。
最大酸素摂取量とは、その人が取り込める酸素の最大量で、
運動強度を高めていった時に酸素摂取量が頭打ちになるポイントこそが、最大酸素摂取量でした。
この値が高い人は、有酸素性エネルギーをより多く作り出すことができるので、高い運動強度になっても無酸素性エネルギーを頼らずに済み、
つまりは、全身持久力に優れているということでした。