オーバーリーチングとオーバートレーニングの違い・メカニズム
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スポーツに関わっていた人なら、オーバートレーニング症候群やオーバーリーチングという言葉を聞いたことがあると思います。
オーバーリーチングがパフォーマンス向上を狙った意図的な方法で、
オーバートレーニングはそれを超えた過度なトレーニングと理解はされているかもしれませんが、
それぞれ何が起きていて、何が違うのか、理解している人は、まだまだ少ないような気がします。
ということで今回は、
「オーバーリーチング」と「オーバートレーニング」の違いを生理学的メカニズムから話していこうと思います。
オーバートレーニング症候群についてわかりやすくまとめた記事もあります。
オーバーリーチングとオーバートレーニング症候群の定義
オーバーリーチングは狙い通り、オーバートレーニング症候群は過剰でダメ、
という風にざっくりと理解されていると思いまが、これらの正確な定義はどうなっているのか。
これについては、ヨーロッパスポーツ学会(ECSS)とアメリカスポーツ医学会(ACSM)の共同声明では、
以下のように、リカバリーに要する期間で定義しています。
このように、オーバーリーチングは「機能的」と「非機能的」に分類され、
非機能的オーバーリーチングにまで行くとリカバリーに2週間以上を要するため、超回復の効果を得られないということが起き始めます。
また、非機能的オーバーリーチングに至ると心理的ストレスも現れ始めるとされています。
最大でも2週間以内でリカバリーが可能ある機能的オーバーリーチングまでが計画的に行われることでメリットが得られる範囲とされている。
心理的症状の有無で考えるのは危険
注意して欲しいのが、
- 心理的症状が出ていない間は機能的オーバーリーチングで
- 心理的症状が出始めると非機能的かオーバートレーニング症候群
という風に、心理的症状で定義することは避けるべきということです。
というのも、この次に詳しく説明しますが、オーバートレーニング症候群・非機能的オーバーリーチングによって生じる心理的症状は、うつ病、ストレス障害などの精神病と区別することが難しいからです。
また仮に、精神障害を持った状態で適度に過負荷のトレーニングを行なった場合でも、リカバリーの低迷などのオーバートレーニング症候群で生じるようなリカバリーの低迷などの症状が起こります。
もちろん、この場合は精神障害なので、トレーニング量を減らすことは問題の解決になりません。
このように、心理的ストレスは、
- オーバートレーニング症候群から来ているのか、
- 他のストレス要因から来ているのか
- また、どちら共から来ているのか
がはっきりしないため、定義としては避けるべきです。
生理学的メカニズム
それでは、オーバーリーチングとオーバートレーニング症候群がどのようなメカニズムで生じているのかという話をしていきます。
非機能的オーバーリーチング・オーバートレーニング症候群の大雑把にいうと、自律神経の異常によって引き起こされます。
また、これを専門用語では汎適応性症候群またはGAS(General Adaptation Syndrome)というストレス性障害として説明されます。
ストレスに対する自律神経の適応
身体的ストレスに限らず、ありとあらゆる精神的ストレスを受けると、HPA軸という「視床下部―下垂体前葉―副腎皮質」の神経系が活性化します。
具体的には、
- 視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンというのが分泌されます。
- これが下垂体前葉に受け取られ、そこから副腎皮質刺激ホルモンが分泌されます。
- 最終的には副腎皮質に届き、コルチゾールをはじめとする副腎皮質ホルモンが放出される。
この一連のストレス適応がHPA軸によって行われる訳です。
つまりは、この反応が非機能的オーバーリーチング・オーバートレーニング症候群の状態では異常を起こすということになります。
非機能的オーバーリーチングの段階
非機能的オーバーリーチングの段階では、上のHPA軸が継続的に活性化されることでシステムが「過敏化」することで症状が生じます。
具体的には、トレーニングの身体的ストレスに対して過敏に反応してしまし、過剰にコルチゾールが上昇してまう状態になります。
コルチゾールは、心拍数の上昇、血糖値の上昇、筋肉を分解し糖新生を亢進、など激しい運動をする状態に体を持っていくことが運動中の役割になります。
そのため、過敏に働くと、ムダに心拍数・血糖値が上昇、ムダに糖新生が亢進されます。
つまりは、軽い運動でも疲労しやすい状態になります。
加えて、過剰なコルチゾールは、意欲の低下、睡眠障害、無力感などの精神的症状も生みます。
運動以外に心理的ストレスの原因がないにも関わらず、このようなうつ症状のような傾向が見られた場合、オーバートレーニングを疑う必要があります。
オーバートレーニング症候群の状態
オーバートレーニング症候群の状態では、さらに継続的に身体的ストレスにさらされ、HPA軸が過敏にコルチゾールを出し続けることで、システムの「疲弊」が起こります。
中枢系のシステムだって過剰に働き続けさせられると疲弊するのです。
この状態では、ストレスに対して反応が弱くなります。つまり、コルチゾールの分泌が少なくなります。
そうなると反対に、運動しても、心拍数・血糖値が増加しない。
ということになります。
また、このように身体的な適応が下がることは、リカバリーの適応が弱くなることも引き起こします。
その結果、
オーバートレーニング症候群の回復には、最低でも数ヶ月、長ければ数年単位のリカバリーを必要とするようになります。
まとめ
今回は、機能的オーバーリーチング、非機能的オーバーリーチング、オーバートレーニング症候群の定義を説明し、
そのあとに、問題となる非機能的オーバーリーチングとオーバートレーニング症候群の生理学的メカニズムについて説明してきました。
特に注意するべき点は、トレーニングの身体的ストレスだけが非機能的オーバーリーチング・オーバートレーニング症候群の原因ではなく、精神的ストレスの状況と身体的ストレスが相まって発症するということです。
アスリートが相当なプレッシャーの中でトレーニングを過度に行ってしまうことは、もちろんオーバートレーニング症候群が起こりやすい状態ですが、
一方で、子供がも日頃のストレスの中にさらされている訳で、部活動などで激しいトレーニングが出来ないからと言って無視してはいけないということを忘れてはいけません。