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実は理解されていない!?オーバートレーニング症候群の実態と評価

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最近では、筋トレブームに加えて、学校の部活動が過度な練習が言われ始めていることもあって、スポーツをやっている人なら、一度はオーバートレーニング、オーバーワークという言葉を聞いたことがあると思います。

 

こういった、過度な運動ストレスによって症状が出てくる状態のことを正式名称では「オーバートレーニング症候群」と言います。

 

そんなオーバートレーニング症候群ですが、

「ただ、疲労が多すぎるだけだろ。」

と、まだまだ軽く見られている傾向にあると思います。

 

オーバートレーニング症候群は場合によっては、ただ休養取るだけでは回復できない状態になる可能性もあります。

 

ということで、今回は、

オーバートレーニング症候群がどんな状態で、どんな症状が現れるのか

など詳しく解説していきます。

 

 

 

 

オーバートレーニング症候群はどうなったら起こるの?

オーバートレーニングは、名前の通り過度にトレーニングしすぎることで起こります。

しかし、ある日に異常なまでに過度なトレーニングをしたからと言って、オーバートレーニングが起こるかと言えば、それは起こりません。

 

我々人間は、身体的・精神的・その他ありとあらゆるストレスを受けても、回復し、むしろその後にはこれまで以上の力を次のつける機能を生まれながらにして持っています。

(身体的ストレスの過負荷に適応することを「超回復」とよく言いますが、精神的ストレスに対してもこれは起こります。)

 

では、どういう時にオーバートレーニングが起こるのか。

それは、

「ストレスを回復する時間が十分でなかった時。」

です。

 

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上の図のように、トレーニングをした後、十分にリカバリーの時間を与えられず、さらにトレーニングを繰り返すと、徐々にパフォーマンスが下がり、最終的にはオーバートレーニング症候群になります。

 

じゃあ、

「オーバートレーニング症候群になっていても、その後多めにリカバリーの日数を取ればいいんだろ?」

と思うかもしれませんが、そうではありません。

 

一度、オーバートレーニング症候群になってしまうと元のパフォーマンスに戻ることが非常に困難になり、下手すれば回復に年単位の時間を要する可能性があります。

 

この、オーバートレーニング症候群の怖さについて次に解説します。

 

 

オーバートレーニング症候群は精神的病?

オーバートレーニング症候群に一度なると、なぜリカバリーに年単位の時間を必要とするのか。それは、

オーバートレーニング症候群は中枢機能の異常によって生じるからものだからである。

 

分かりやすく言い換えると、

身体的ストレスが原因で起こった「精神疾患」のようなものなのです。

 

激しく運動すると、身体中のエネルギー(主にはグリコーゲン)が枯渇したり、筋繊維が損傷したり。といった身体的ストレスが生じます。

 

この身体的ストレスに適応するためには、まずは脳が身体に対して適応するように指令を送らないといけない訳ですが、オーバートレーニング症候群になると、この脳の指令が異常を起こします。

 

この中枢系システムの異常は、「過敏化」「疲弊」の二段階で起こります。

 

中枢系システムの過敏化

オーバートレーニング気味になると、まず、身体的ストレスに対する「過敏化」が起こります。

この段階では、身体的ストレス、つまり運動をするとアドレナリンやコルチゾールといった興奮性のホルモン物質が異常に分泌されるようになります。

 

また、その分泌は運動をやめても継続され、その後の私生活にも影響を及ぼします。

 

その結果具体的には、

  • 少しの運動で異常に心拍数が上がるようになる。
  • リカバリーが遅くなり、慢性的に疲労が取れなくなる。

などの身体的症状に加えて、

  • 寝付けない、よく眠れない、起床後に眠気が取れない、などの睡眠障害
  • うつ病やストレス障害のような症状(意欲の低下、無力感など)
  • 集中力・注意力などの認知機能の低下

などの心理的症状が出始めます。

 

しかし、この段階は非機能的オーバーリーチングと分類でき、数週間〜数ヶ月程度の安静休養によって回復できると言われています。

(もちろん、避けなければならないことには変わりありません。)

 

中枢系システムの疲弊

中枢システムが過敏に働くと、最終的には中枢系システムの「疲弊」が起きます。

この段階に至ると、運動という身体的ストレスに対する中枢系の反応が弱くなり、適応が弱くなる、最悪の場合は起きないという状態に至ります。

 

これがどういうことを意味するかというと、

疲労が起きても脳が回復しようとしない。

ということを意味しています。

 

この状態が、オーバートレーニング症候群の状態であり、一度、オーバートレーニング症候群になると年単位の回復期間が必要になる理由なのです。

 

症状は、身体的症状・心理的症状とも非機能的オーバーリーチングの段階と変わらないが、非機能的オーバーリーチングより心理的症状がより大きく生じる可能性が高いと言われている。

 

では、そんなオーバートレーニング症候群またはオーバーリーチングと判断するにはどのように評価するべきか。という話を次にしていきます。

 

 

オーバートレーニング症候群の診断

最初に明確に言っておくと、

オーバートレーニング症候群・オーバーリーチングの診断は非常に難しい。

と、現状のエビデンスでは言われている。

なので、最も重要なのはオーバートレーニング症候群が起きないようにトレーニングを正しく管理することです。

 

というのも、オーバートレーニング症候群を特徴づける「心理的症状」は、発症メカニズムがうつ病やストレス障害などの精神疾患による発症メカニズムと全く同じで、

仮に、それらの症状があったとしても、その心理的症状が

  • トレーニングの身体的ストレスから来るものなのか
  • 精神的ストレスから来るものなのか
  • また両方からなのか。

を区別することは限りなく不可能に近い。

 

脳では、身体的・精神的関わらず、どんなストレスもHPA軸と言われる中枢システムにて対応するため、脳にとっては、どちらのストレスも「ストレス」として扱われ、区別されないんです。

 

 

一方で、身体的症状として「リカバリー能力の低下」「リカバリー時の心拍数の急激な低下」をチェックすることで“オーバートレーニング症候群の可能性“は確認できると言われています。

 

この方法としては、二重運動テストが最も信憑性が高いと言われています。

二重運動テストとは、2回の持久性運動を4時間のリカバリーを取って行う方法です。

また、持久性運動には心拍数が85%〜90%程度になる強度、つまり20分間程度の持久走が最も好ましいと言われています。

 

例えば、20分間走の距離を4時間のリカバリーを取って測定し、その時に心拍数を測定します。

これを、定期的に測定して、その選手の通常時に比べて、

  • 明らかに2回目の距離の低下が大きい選手、
  • 1回目の運動後に心拍数が急激に下がる選手

などは、オーバートレーニング症候群の可能性を疑う必要があります。

 

しかし、この身体的症状だけではオーバートレーニング症候群と断定できません。(というのも、単なる体調不良によっても同じことが起こるので。)

 

そのため、オーバートレーニング症候群の診断には、

  • 家庭事情など私生活の問題がないにも関わらず、うつ病のような心理的症状が出ること
  • 加えて、リカバリー能力の低下、リカバリー時の心拍数の激減の身体的症状も出ていること

というように、総合的に判断する以外はないのが現状です。

 

兎にも角にも、オーバートレーニング症候群をまず起こさないように、日頃からのトレーニング量の管理と選手の精神状態を常に確認することが最も大事になります。

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