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グロインペイン症候群のリスクファクターとは?

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様々な原因が絡み非常に厄介なことで名高いグロインペイン症候群ですが、
近年、グロインペインの研究も盛んになり、メカニズムも少しずつ解明されてきました。
 
2014年にはThe First World Conference on Groin Pain in AthletesではDoha agreementが定められ、そこでグロインペインの分類が定義されました。
 
 
Doha agreementは以下の記事を参照ください。
 
 
そんな中で、グロインペインには体幹安定性内転筋群筋力などが関係していることが明らかにされています。
 
と言うわけで今回は、
グロインペインのリスクファクターについての論文をレビューしていきます!
 
 
 
 
 

論文概要

今回は、2010年にThe American Journal of Sports Medicineに掲載された、
 
「Intrinsic risk factors for groin injuries among male soccer players: a prospective cohort study」
 
という論文をレビューしていきます。
 
 

対象者

この研究では、ノルウェーのアマチュアサッカーチーム31チームを対象に研究を行なっています。
 
 

研究デザイン

2004年のプレシーズンにおいて、グロインペインのスクリーニングを行う質問紙を行い、既往歴と機能性スコア(GrOS)を収集し、
加えて、鼠径部の臨床テストを行います。
 
その後のシーズンでのグロインペインの症例と質問紙と臨床テストの結果から、グロインペインのリスクファクターを検討するコホート研究です。
 
 

内転筋の筋力低下と既往歴がグロインペインのリスクファクター

 
この研究で得られた結果からは、以下の2つのリスクファクターがグロインペインの発症リスクが有意に高めることが明らかにされました。
  • 急性グロインペインの既往歴がある場合、2.60倍 (95% CI, 1.10-6.11)
  • 内転筋の筋力低下が見られた場合、4.28倍 (95% CI, 1.31-14.0)
 
 

筆者の考察

グロインペインは、サイドカッティング動作、鋭い加速・減速・方向転換などによって誘発されるとこうことが明らかにされています。(Morelli V, et al. 2005)
 
しかし、内転筋の長さはグロインペインのリスクファクターとならないとする研究があり、(Thacker SB, et al. 2004)
また、股関節外転の柔軟トレーニングはグロインペインの予防効果がないとする先行研究が出ています。(Witvrouw E, 2003)
 
こういったことから、内転筋に関連するグロインペインは、内転筋が単純に伸張されることによって起こるわけではなく、
外転筋と内転筋が協働する中で、内転筋の筋力低下によって内転筋がエキセントリックな負荷に耐えられないことは原因となり得ると説明できます。
 
 

急性グロインペインは、瞬発的な選手に多い。

今回の研究で見られたグロインペイン症候群では、急性が22症例慢性が39症例でした。
 
ここで、休養が必要となる必要となる急性グロインペインの21症例に絞ると、以下のようなリスクファクターも明らかにされました。
  • 40mのスプリントのタイム低下 (2.03; 95% CI, 1.06-3.88; P = .03)
  • 腹直筋の収縮時痛 (15.5; 95% CI, 1.11-217; P = .04)
 
 

筆者の考察

この結果に対して筆者は、
40mスプリントのタイム低下から、急性グロインペインは瞬発的な運動に起因することが示唆されます。
つまり、瞬発的な選手は急性グロインペインの発生リスクが高いことが示唆されるとしています。
 
加えて、急性グロインペインの発症に関しては、既往歴はそれほど関係ないと考察しています。
 
 

まとめ

以上が、グロインペインのリスクファクターにつての論文レビューでした。
 
 
グロインペインは、一度なってしまうと対応しにくく
また、治ってもリハビリが難しいため再発のリスクも高いというのが特徴的です。
 
そのため、予防プログラムを行なって発症リスクを最小限に抑えることが今後の研究の方針になると考えられます。
 
と言うわけで次回は、グロインペインの予防プログラムの効果の論文をレビューしていきます!
 
 

参考文献

  • Engebretsen, A. H., Myklebust, G., Holme, I., Engebretsen, L., & Bahr, R. (2010). Intrinsic risk factors for groin injuries among male soccer players: a prospective cohort study. The American Journal of Sports Medicine, 38(10), 2051-2057.
  • Morelli V, Weaver V. Groin injuries and groin pain in athletes: part 1. Prim Care. 2005;32:163-183.
  • Thacker SB, Gilchrist J, Stroup DF, Kimsey CD Jr. The impact of stretching on sports injury risk: a systematic review of the literature. Med Sci Sports Exerc. 2004;36:371-378.
  • Witvrouw E, Danneels L, Asselman P, D’Have T, Cambier D. Muscle flexibility as a risk factor for developing muscle injuries in male pro- fessional soccer players: a prospective study. Am J Sports Med. 2003;31:41-46.
 
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