サッカーのドリブルで重心移動がなぜ重要性か。バイオメカニクス的に解説【前編】
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サッカーにおいて、ドリブルの切り返し動作をスムーズに行うことは言うまでもなく重要です。
切り返し動作をスムーズにするためには、筋力ももちろん大事なのですが、
体の使い方のテクニックとして、重心移動を効果的に行うことが非常に重要です。
今回は、スポーツバイオメカニクスの観点からドリブル時の重心移動について解説してきます。
まず、スポーツバイオメカニクスとは。
スポーツバイオメカニクスと言うと、難しく聞こえるかもしれませんが(内容は非常に難しい分野ですが。)目的はシンプルな分野で、
「人間の動作を物理的に見る研究分野」
がスポーツバイオメカニクスです。
つまり、人間はどのように動作すれば効率的に動くことが出来るのかと言うことを突き詰める研究分野です。
有名なドリブラーの共通点
まずは、何人かのドリブラーの共通点を見てみましょう。
下はメッシ、ロッペン、乾、3選手の動画です。
いつ、重心を高く保ち、いつ重心を低く保つかに注意して見てみてください。
【リオネル・メッシ】緩急の付け方が抜群!無双レベルのドリブル集 20シーン厳選
【サッカー】アリエン・ロッベン(Arjen Robben)神ドリブル集
【乾貴士】レアル相手に見せつけた圧倒的存在感 ドリブルスキル集【fb】
どうでしょうか。
進行方向は変えずに加速する時には重心を高く保ち、方向転換する時には重心を下げるシーンが多かったと思います。
それでは、なぜそのような重心移動をするのか解説していきます。
加速・切り返しで重要な支持基底面とは?
効率的な加速・切り返し動作を考える時、「支持基底面」という面が非常に重要になってきます。
支持基底面ってどこ。
支持基底面というのはどういう面かというと、着いている足とその間のエリアのことです。
これはどういうことかと言うと、下のような感じになります。
このように、足とその間の部分を塗りつぶした時に出来る面が支持基底面で、
足を広げると支持基底面の面積は広くなり、足を狭めると面積は狭くなります。
また、このように足の状態によって面積や形が変わります。
着いている足のみなので、片足が浮いていれば片足の面積が支持基底面になります。
一旦この支持基底面の概念を覚えておいてください。
支持基底面がコケるか、コケないか決める
支持基底面がなぜ重要かと言う話ですが、この面は重心と関係しています。
支持基底面の中に重心が入っているかどうかで、コケるか、コケないかが決まります。
下の図を見てください。
- 直立時、重心は両足の間なので、余裕で支持基底面の間にあるのでコケません。
- 2枚目、変化格好をしたせいで重心が外に移動し、重心が支持基底面の外側に移動してしまいました。この状態で放置するとコケます。
- 3枚目、コケそうになったところ、足を広げて支持基底面を広げることで、重心を支持基底面の内側に保持して、コケるのを防ぎました。
つまり、支持基底面の内側に重心がある間は、人間の体は動きません。
逆に動きたい時は、重心を支持基底面から動きたい方向に外せば動きます。
また、大きく外せば外すほど、外への力は強くなります。
これが、今回解説する加速・切り返しをバイオメカニクス的に考える時の基本になります。
※加速・切り返しには他にも、地面への力の加え方などもありますが、今回は効率的な重心移動ということで、支持基底面の話に絞って解説します。
※地面への力の加え方も今後書きます。
ドリブル開始時の高い重心でスタートするメリット
ドリブラー3選手の共通点の1個目は、
「進行方向を変えずに加速する際は重心を高く保つ」
と言うものでした。
では、
まず、重心を高くするということは、支持基底面が狭くなり、重心を外しやすい状態にするということです。
この図は、かなり簡易的には示していますが、
高い重心だと、支持基底面が狭くなり少ない体重移動ですぐに動き出せます。
一方で、低い重心では支持基底面が広くなり、動き出すまでが長くなってしまいます。
そのため、加速するためには、
高い重心を保ち、素早く重心を支持基底面の外に外すことが重要になります。
※加速に関しては、支持基底面の話も関係しますが、重力をうまく使うことの方が大きく関わってきます。それについては、次回書きます。
方向転換時に重心を落とす理由
加速では素早く動き出すために、支持基底面を狭くして重心をすぐに外せるようにしておくことが重要でした。
しかし、方向転換時では異なります。
方向転換時のスムーズな切り返しとは、
- 進行方向の逆向きの力をかき消す
- 進行歩行に力を加える
のプロセスをいかに早くこなせるかです。
そのため、大きな力が必要になります。つまり、支持基底面からいかに大きく重心を外せるかが重要になります。
これが、いかに早く重心を外せるか。であった、加速時とは異なる点です。
下の図を見てください。
加速前では両足で支持基底面が決められていましたが、方向転換時はズピードに乗った状態から片足での切り返しなので、支持基底面は片足のみになります。
スピードに乗っていた時、重心より後ろ側(進行方向と反対側)に支持基底面を持って来ていいましたが、
方向転換時、進行方向が変わることで支持基底面の来るべき位置が変わります。
この時に、「逆向きのスピードを打ち消す+進行方向に加速する」
の2つの分の力が必要になり、この分の力を一気に加えるためには、支持基底面を出来るだけ重心から話した位置に持ってこないと行けません。
となった時に、重心が高いと重心の遠くに足を着くことができないため、支持基底面が重心からあまり離すことができません。
一方、重心を低くすることで、より遠い位置に支持基底面を持ってくることができるので、より強い力を発揮できます。
これが、一流ドリブラーが方向転換時に重心を落とす理由です。
まとめ
ドリブラーの加速・方向転換時の重心移動をバイオメカニクスの「支持基底面」という観点で解説してきました。
加速する時には、いかに早く支持基底面から外して加速を始めるか
方向転換をする時には、いかに遠く支持基底面を外して力を加えるか
が重要でした。
加速に関しては、支持基底面の説明では概念的で不十分だったと思います。
加速は、次回紹介する重力をうまく利用することが重要になってくるため、そこで詳しく説明できると思います。