週6部活のハードな練習は本当に意味あるのか。|疲労と効果
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近年、「ハードすぎる部活」が問題視されて来ました。
主には、部活動が教員のほぼサービス残業によって賄われているという点ですが、その反論に対して多くあるのが、
「もっと練習したい子供はどうしたらいいんだ。」
というものです。
「もっと上手くなりたい」
「そのためにもっと練習したい」
というのは日本では当たり前の発想だと思いますが、
実は、海外ではそうではありません。
部活動の現状について、現在のスポーツ科学での見解を踏まえて、紹介して生きたいと思います。
練習の量と練習の質は可能か
「質と量」という話は、スポーツ界の永遠の議題です。
一般的に理解されている、「質×量=練習の効果」という発想はスポーツ科学においても、間違いありません。
となれば、質を高く保って、量を増やす。
これに尽きるという結論に至りそうですが、この両方を高くするんだという考えは、スポーツ科学の見解ではありえません。
スポーツでは練習量を増やせば確実に疲労が溜まります。そして、その疲労が練習の質を下げます。
つまり、質を保ちつつ量を増やすといことはスポーツ科学では不可能とされています。
スポーツでは、質が優先
練習の質と量が両立出来ないとなれば、質を上げる方が効率的なのか、量を増やした方が効率的なのかということが疑問になります。
結論から言うと、スポーツでは質を高めることの方が重要になります。
トレーニングの原則に「特異性の法則」というものがあります。
これは、トレーニングの成果はトレーニングした内容のみに限って起こる。というもので、例えば、腕のトレーニングをすれば腕は鍛えられても、脚は鍛えられないと言うものです。
これはスポーツにも当てはまります。
スポーツの試合は、大概は疲労のない状態でスタートします。もちろん、試合の終盤になるにかけて疲労が蓄積しますが、ほぼ同じように疲労します。
スポーツでいう特異性とは、
疲労がない状態でスタートすること、
そして時間の経過共に徐々に疲労していくこと。
です。
なので、練習も100%の状態でスタートし、そこから疲労していくような状態でトレーニングしなければ、それはスポーツに特異的な練習とは言えない、
つまり、質の低いトレーニングになってしまいます。
こういうと、
「試合終盤の疲労がある状態でどれだけ動けるかが、勝負の決め手になる。」
という意見が出そうですが、
それでも科学的には合理的ではありません。
なぜなら、試合終盤に起こる疲労と、日をまたいで起こる疲労は物が違うからです。
試合で起こる急性疲労と日越しで起こる慢性疲労
試合中に起こる急性疲労は、筋の酸化とエネルギーの枯渇が主な疲労の原因になります。
一方で、日をまたいで起こる慢性疲労は、筋損傷と神経の中枢性疲労です。
そのため、疲労の種類が違います。
日をまたいで疲労を持ち越した状態でトレーニングを行なった場合、得られるのは、筋損傷+中枢性疲労への耐性です。
これは、試合週ではそれほど大きく関係してこない要素になります。
なので、慢性疲労がない状態でトレーニングをし、急性疲労に対するトレーニングを行わなければ効果が薄まってしまいます。
なぜ、部活動で量が求められがちなのか
質を高めることが大事であることは、これまでも言われてきました。
しかし、今でも多くの部活は週6回の練習で量を求めている傾向にあります。
なぜ、部活動が量を求めてしまう傾向にあるのか。
それは、質を上げられないからです。
スポーツに関係しない要素が絡む
1つ目の理由としては、部活動の環境によるものが挙げられます。
部活動には、そのスポーツに関係しない要素が多分に絡まってきます。
- 学生生活での生徒間の人間関係
- 教師と生徒という立場の違い
- 部活動の学校教育としての役割
など、様々なしがらみが部活動にはあります。
これらが、選手がスポーツに100%集中できない原因になり得ます。
スポーツにおける集中した状態とは何かというと、
例えば試合に勝つなど、成果のために必要な要素に注目し、関係ない要素を注意から排除できている状態です。
その環境は部活動では整わないのが問題になります。
顧問は教員。監督は指導者
もう1つは、部活の顧問はスポーツ指導のプロフェッショナルではないということです。
教師は教育指導のプロです。しかし、スポーツ指導のプロではありません。
これは、似ているようでやはり一緒ではありません。
- 選手のモチベーションをどう管理するか
- チームをどうまとめるのか
などというのは教師とは違う、スポーツに適応された能力です。
そもそも、専門家ではないこと自体が、練習の質を上げられない原因と考えられます。
では、部活動の練習はどうするべきか
これからは、自分個人の意見になりますが、部活動はどうあるべきか。
現状の部活動の環境・状況では、質の高い合理的なトレーニングを実現することはかなり困難です。
となれば、解決策としては2つの考えられます。
- スポーツ指導者を雇い、学校から切り離す。
- 教育目的のスポーツに徹底する。
スポーツ指導者を雇えば、もちろん学校から少し離れた存在になります。
そのため、選手はスポーツに専念しやすく、指導も高い質で行えるでしょう。
一方、教育目的のスポーツを徹底するのであれば、学校教育のプログラムとして競技性を制限する必要があります。
競技スポーツを通じて協調性を学ぶとは言いますが、
日本の教育の根底にある皆平等・譲り合いの協調性と、スポーツでの自分の役割を全うする協調性は違うと思います。
少なくとも、週6の無駄にハードな練習はどちらにしても効果的ではないので、今後なくなっていくべきでしょう。