トレーニング Univ.

最新のトレーニング科学を、身近に。

サッカーで、中枢性疲労はどれほど影響しているのか。【論文レビュー】

スポンサーリンク


スポンサーリンク


f:id:tatsuki_11_13:20180913055840p:plain

 

サッカーのパフォーマンスで「疲労」を語ると、どうしても、身体的な疲労に重点を当ててしまいがちです。

 

ですが、筋肉を動くのもそもそも脳からの指令があるからです。

なので、脳の疲労もサッカーのパフォーマンスを作用する要素になり得るということは考えられます。

 

ということで今回は、

サッカーにおける中枢性疲労についての論文を紹介してきます!

 

 

 

 

論文概要

セリエAのトップチームの選手を対象に、試合前後の中枢神経による疲労と末梢神経による疲労の評価を行い、それらと身体的パフォーマンスと技術的パフォーマンスを比較して、サッカーでのパフォーマンスの低下が中枢神経による疲労の方がより大きく影響しているのか、または、末梢神経による疲労が大きく影響しているのか。を明らかにすることを目的とした論文です。
 
 

方法

研究対象者

某セリエAチームに所属するプロサッカー選手22名(2GK,8DF,8MF,4FW)

 

測定項目

  • 最大随意膝伸展の筋力と筋電の振幅
  • 様々な電気刺激(1Hz, 10Hz, 100Hz)を加えた時の筋収縮
  • 20m+20mの往復切り返し走のタイム
  • パスの技能テスト
  • 筋損傷の血液指標(クレアチンキナーゼ)
 
 

研究方法

シーズン中のある試合を対象に、試合前と試合後に様々な運動パフォーマンスの測定をする。
試合後の測定は、試合直後、24時間後、48時間後のタイミングで測定する
 
 
 

結果と考察

最大随意膝伸展の筋力と筋電の振幅

f:id:tatsuki_11_13:20180913060704p:plain

 

膝伸展による随意的筋力は、試合直後に低下し、48時間後に元も筋力に戻りました。

 

ここでは、「随意筋力」「筋電」ともに低下が見られています。

つまり、随意筋力の低下は、筋肉による疲労だけではなく、そもそもの電気刺激の量が低下していることも原因に挙げられるということです。

 

 

言い換えると、中枢性疲労によるパフォーマンスの低下が幾分か起こっているということです。

 

試合中に起こった筋肉損傷エネルギー枯渇などが筋力に影響していることはもちろんですが、

この結果から、中枢神経の疲労もサッカーのコンディション低下の原因に考えられると言えます。

 

 

様々な電気刺激(1Hz, 10Hz, 100Hz)を加えた時の筋収縮 

f:id:tatsuki_11_13:20180913060649p:plain
 

こちらは、外的に電気刺激を筋肉に加えた場合の筋発揮の変化を表しています。

 

100Hzの強電気刺激を与えた時の筋力は試合後でもさほど大きく低下していませんが、1Hz10Hzの弱電気刺激を与えた時の筋力が大きく低下しています。

 

先ほどの随意的な筋力とその筋電図が中枢性疲労を見ているのに対して、

電気刺激による受動的な筋力では末梢性疲労を見ています。

 

外的に電気刺激を与えることによって、脳からの信号に関係なく筋収縮を起こしているわけですが、

ここでの筋力が下がるということは、筋肉が電気刺激に対応できなくなっているということを意味しています。

 

特に、弱電気刺激で大きく低下が見られるため、電気刺激をロスなく筋肉に伝える神経筋関連に問題がある可能性が考えられます。

 

 

20m+20mの往復切り返し走のタイム

 

f:id:tatsuki_11_13:20180913064034p:plain

 

 

こちらは、フィジカル的パフォーマンスの評価として用いられた切り返し走のタイムです。

 

 

統計的には、中枢神経の疲労と末梢神経の疲労どちらも、パフォーマンスとの相関関係はなく、どちらの影響もパフォーマンスの低下に影響しているという結果でした。

 

 

パスの技能テスト

f:id:tatsuki_11_13:20171221224454p:plain 
 
 
続いて、技術的パフォーマンスの評価を行うパス技能テスト結果です。
試合の疲労によるパス技能の低下は起こっていないという結果が出ました。
 
この結果からは、疲労によってパスがズレ始めるというのは、キック動作の技術的安定性の低下が原因ではないということが考えられます。
むしろ実際の試合では、体のバランスを保つ能力が下がっていることで、パスがズレていると考えられます。
 
 

個人的解説

多くのサッカーの疲労に対する調査は、筋損傷やグリコーゲンの枯渇など身体的な疲労に焦点を当てて研究するのですが、
この研究は、中枢神経末梢神経の2つを比べて調査している珍しい研究です。
 
最近の過密日程での疲労は、身体的な要素だけでは評価しきれない部分が多く、
シーズンを通してのプレッシャーは、中枢性疲労の原因として大いに考えられます。
 
中枢性疲労も、サッカーのようなリーグ戦のスポーツでは注目していくべきでしょう。
 

論文概要

論文タイトル
Match-related fatigue in soccer players
著者
Rampinini, E.,
Bosio, A.,
Ferraresi, I.,
Petruolo, A.,
Morelli, A.,
Sassi, A
発行年
2011
出典
Medicine & Science in Sports & Exercise
文献表記
Rampinini, E., Bosio, A., Ferraresi, I., Petruolo, A., Morelli, A., & Sassi, A. (2011). Match-related fatigue in soccer players. Medicine & Science in Sports & Exercise, 43(11), 2161-2170.
 
Copyright©️2018 トレーニングUniv. All rights reserved.