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痛みとスパズムの治療法|物理的治療・薬剤・心理学的治療

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怪我をすると、炎症段階では「一次的炎症反応」「二次的炎症反応」の2段階で炎症が起こります。
 
一次的炎症反応では、「出血」「浮腫形成」が起こり、これらの症状に対応した治療を行うことが基本となります。
一次的炎症反応に対するマネジメントは以下の記事にて解説しました。
 
一方、二次的炎症反応では、「痛み」「スパズム」が起こります。
 
というわけで今回は、
二次的炎症反応のマネジメントについて解説していきます!
 
 
 
 
 

痛み刺激の促進と抑制

 
痛みは、痛み刺激が侵害受容器で感知され、求心性ニューロン・脊髄を介してに伝達されることで感じ取られます。
この間は、神経伝達物質がニューロンを通じて伝達されていくことになります。
 
神経伝達物質には様々な種類がありますが、痛み刺激の伝達に用いられる神経伝達物質には、
  • 興奮性神経伝達物質として「P物質」
  • 抑制性神経伝達物質として「セロトニン」
があります。
 
P物質は、神経を興奮させて、発火を促進するため、痛みをより強くするように働きます。
一方、セロトニンは、神経を抑制し、発火を抑制するように働くため、痛みを弱めるように働きます。
 
つまり、治療的に介入する際は、
P物質の分泌を抑制し、セロトニン分泌を促進することが重要になります。
これは主に、麻酔や抗炎症剤による目的になります。
 
ちなみに、P物質は英語で「Substance P」です。つまり直訳です。
 
 

痛みとスパズムに対する治療の種類

では、二次的炎症反応である痛みとスパズムに対する治療はどのようなものが挙げられるか。
 
治療の目的となる作用は大きく以下の3つに分類できます。
  • 物理的作用
  • 薬剤
  • 心理学的作用
 
 

物理的作用による治療

 
物理的作用は、物理的に刺激を与えることで痛みを緩和する方法です。
 
この方法には、以下のような例が挙げられます。
  • 寒冷療法
  • 温熱療法
  • 電気的治療
  • マッサージ(徒手的治療)
  • 運動療法
 

物理的作用のメカニズム 

痛みは、求心性ニューロンのAδ線維C線維を通って伝達されます。
Aδ線維やC線維は、比較的に細く優先度の低い求心性ニューロンに分類されます。
 
一方で、Aα線維Aβ線維はより太く、これらの線維に伝達された刺激は脳で優先的に認識されるようになっています。
 
物理的作用が働くメカニズムの原則は、
Aα線維やAβ線維に刺激を加えることで、Aδ線維やC線維の痛み刺激による痛覚を緩和することです。
 
 
Aα線維は、筋紡錘からの刺激を中枢に伝える求心性ニューロンで、
Aβ線維は、ゴルジ腱器官からの刺激を中枢に伝える求心性ニューロンです。
つまり、筋紡錘やゴルジ腱器官にアプローチすることで物理的作用が得られます。
 
 

寒冷療法

 
寒冷療法は、アイシングなどによって組織の温度を下げることによる物理的作用を狙う治療法です。
 
組織温が低下すると、筋紡錘からの求心性ニューロンの発火が抑制され、
その結果、筋紡錘からの刺激に対応して錘内筋繊維をコントロールする、γ運動ニューロンの発火が抑制されます。
 
これによって、筋紡錘の過敏状態が抑制され、つまりはスパズムが改善されます。
 
 

温熱療法

 
温熱療法は、ホットパックや超音波治療によって組織の温度を上昇させる治療法です。
 
温熱療法では、以下の2つのメカニズムによってスパズムの抑制が起こります。
  • ゴルジ腱器官のⅠb線維の発火を促進によるγ運動ニューロンの発火抑制
  • 組織温上昇が、γ運動ニューロンに直接働くことによって発火抑制
 
温熱治療は、スパズムの抑制に効果が高い反面、血流を促進することで急性期の炎症反応を悪化させるため、急性炎症期には禁忌です。
 
 

電気的治療

 
電気的治療は、電気刺激をAα線維やAβ線維に直接加えることで、物理的作用を起こします。
 
しかし、低〜中強度の経皮的電気神経刺激(TENS)では、治療を行なっている間はAα線維やAβ線維に刺激が与えられるので、物理的作用が引き起こりますが、
治療を終えると効果はなくなり、痛みは戻るとされています。
 
一方で、鍼によるTENS短時間高強度TENSでは、電気刺激が強く、侵害性刺激となります。
その結果、過刺激痛覚脱出が起き、内因性ピオイドが放出され、治療後にも残ります。
 
内因性ピオイドは抑制性神経伝達物質として作用するため、鎮痛効果が治療後にも残ります。
 
 

薬剤による治療

 
薬剤による痛みの治療には、主に以下の2種類が利用されます。
  • 鎮痛薬
  • 筋弛緩薬
 
 

鎮痛薬

鎮痛薬は、さらに「オピオイド鎮痛薬」「非オピオイド鎮痛薬」の2種類が挙げられます。
 
オピオイド鎮痛薬は、
オピオイドによる麻酔効果によってP物質の分泌を抑制させ、痛みを緩和します。
 
しかし、オピオイド鎮痛薬は、モルヒネ様薬剤の一種であり、つまりは中毒性があります。
多くの国では、規制薬物として指定されており、医師の処方が必要です。
 
一方で、非オピオイド鎮痛薬抗炎症薬とも言われ、
抗炎症効果によって炎症反応を抑えることで痛みを緩和します。
 
これには、NSAIDsアスピリンなどが挙げられます。
こういった抗炎症効果を含む薬剤は、抗凝固作用もあり、これが血小板の凝縮を阻害します。
特に、アスピリンはこれらの悪影響が長期的に現れるため、急性炎症期には禁忌です。
 
 

筋弛緩剤

筋弛緩剤は、脊髄反射の反応を抑制し、遠心性ニューロンの発火を抑制することで、スパズムを抑制します。
 
筋弛緩剤は、スパズムの軽減によって痛みを緩和させますが、同時に筋力低下なども引き起こすため、スポーツを続行する選手に対する一時的な処置には用いられません。
 
 

心理学的作用

 
痛みの感知は、心理学的な影響も十分に受けます。
 
心理学的作用を利用する上で、まず患者の痛みに対する考え方の傾向が考慮されます。
 
Internal health locus of controlの患者は、
健康状態(痛み)は自身の努力によって十分に影響できると考える傾向があり、治療にも積極的ですが、
External health locus of controlの患者は、
健康状態(痛み)を努力によって改善することはできないと考えるため、治療に消極的になります。
 
こういった観点から、患者に合った心理的アプローチを行うことが重要です。
 
また、心理学的サポートとしては、怪我から復帰できる安心感を与え、成果ではなく治療にり組む努力を賞賛することが重要です。
 
また、痛みや不安から気をそらす「コーピングスキル」も重要なアプローチです。
これには、イマージェリー、気晴らし、リラクゼーションなどがあげられます。
 
 

まとめ

以上が、二次的炎症反応の「痛み」と「スパズム」に対するマネジメントでした。
 
  • 痛みを伝達する神経伝達物質は、P物質(興奮性)とセロトニン(抑制性)
  • 治療法には「物理的作用」「薬剤」「心理学的作用」の3つのアプローチに分類できる。
  • 物理的作用では、Aα線維やAβ線維にアプローチし、スパズムを抑制する。
  • 薬剤では、鎮痛薬は痛みを緩和し、筋肉弛緩剤はスパズムを抑制する。
  • 心理学的作用では、安心感を与えることや、痛みから気をそらすことが重要。
 
以上です!
 
 
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