サッカー選手のハムストリングスの怪我はどれぐらい予防できるか
スポンサーリンク
スポンサーリンク
要約
この研究は、プロサッカー選手を対象にハムストリングス筋力の左右差がハムストリングスの怪我率に実際に影響しているのか。また、このインバランスに対する補足的なトレーニングは予防的にどのように影響しているのかを調査している。
結果的には、実際にインバランスによってハムストリングスの故障率が大幅に高くなり、それは補足トレーニングによって改善されると怪我の予防につながると言えた。
方法
研究対象者
研究内容
インバランスの基準
- 60°/秒または240°/秒でのハムストリングスのコンセントリック収縮の左右差が15%以上
- 30°/秒または120°/秒でのハムストリングスのエキセントリック収縮の左右差が15%以上
- 60°/秒でのハムストリングスのコンセントリック収縮が同じ速度の大腿四頭筋のコンセントリック収縮の46%以下
- 240°/秒でのハムストリングスのコンセントリック収縮が同じ速度の大腿四頭筋のコンセントリック収縮の46%以下
- 30°/秒でのハムストリングスのエキセントリック収縮の240°/秒の大腿四頭筋のコンセントリック収縮の85%以下
結果と考察
ハムストリングの左右インバランスを持つ選手の割合
上のグラフはインバランスを持つ選手と持たない選手の割合を左の円グラフ、インバランスを持つ選手の中でハムストリングスの補足トレーニングの有無とインバランスの改善の有無によって分けた割合を右の円グラフに示している。
ハムストリングのインバランスを持つ選手は、全体の47%にもなり、プロのサッカー選手であっても、ハムストリングスに問題を抱えている選手は多くいることが分かる。
また、インバランスを持ち選手の中でも、そのうち40%近くの選手は補足トレーニングを行なっていない。
つまり、プロサッカーの現場でもハムストリングスの怪我の予防に積極的でないチームもかなりの数存在することも言える。選手に最も多い怪我であるハムストリングの怪我にも関わらず、プロのサッカーチームレベルでも予防の概念が浸透しきっていないことが意外にもわかった。
インバランスの状態でのハムストリングの故障率
それでは上のグラフが、本題のハムストリングの故障率です。
根本的にインバランスがない選手はシーズン中のハムストリングスの故障率が4.3%とかなり低くなっている。
一方で、インバランスがあった選手は故障率がない場合と比較すると高くなっている。
特に、インバランスのある選手の中で補足トレーニングをしていない選手(ありA)では16.5%の故障率があり、インバランスがない選手より4倍近く故障のリスクが高い。
また、補足トレーニングをしたが改善が見られなかった選手(ありB)でも、11.0%と一定のトレーニング効果は見られたものの、2倍以上リスクが高い。
一方で、インバランスがあった選手でも補足トレーニングによってインバランスを改善した選手(ありC)は、5.3%と先ほどと比べ2〜3倍近く、ハムストリングの故障のリスクを抑えていることが分かる。
つまり、ハムストリングの補足トレーニングをインバランスの問題を持つ選手に行うことでハムストリングの怪我のリスクを軽減でき、インバランスを改善することで3倍近い予防効果があげられると言える。
個人的解説
この論文は現場ベースのデータなので、そのまま現場に応用することが出来るという点でかなり有用な論文だと言える。
補足トレーニングについては、チームによって詳細は異なるため、詳しく書かれていないが、インバランスを改善することで明らかに予防効果があると言える研究結果が出ている。
この研究結果をもとに、プレシーズンにハムストリングスのインバランスをスクリーニングしておき、インバランスを改善するトレーニングメニューを取り入れることは検討していきたいところである。
論文概要
論文タイトル
|
Strength Imbalances and Prevention of Hamstring Injury in Professional Soccer Players.
|
著者
|
Askling, C., Karlsson, J., & Thorstensson, A.
|
発行年
|
2003
|
出典
|
The American Jounal of Sport Medecine
|
文献表記
|
Askling, C., Karlsson, J., & Thorstensson, A. (2003). Hamstring injury occurrence in elite soccer players after preseason strength training with eccentric overload. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 13(4), 244-250.
|