週2試合の過密スケジュールはサッカー選手をケガさせる。
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この5年、10年で、サッカーは急激に産業化しました。
日本でもDAZNがスポンサーについたことで、Jリーグの経済事情は大きく変わりました。
(実際、Jリーグの賞金はここ数年で10倍近く上がっています。)
一方で問題となっているのが、「週2試合の過密日程の常習化」です。
本来、毎週末にリーグ戦をこなしていく週1試合がメインであったプロサッカーですが、
今ではトーナメント戦や代表戦もどんどんと増えていき、強豪チームでは週2試合が定番化していきました。
そして、週2試合は選手の負担を大幅に増加させています。
ということで今回は、
週2試合のスケジュールが選手のケガのリスクにどのように影響するかを紹介します。
論文概要
Dupontさんらが2010年に”Aerican Jounal of Sports Medicine”に投稿した論文
「Effect of 2 Soccer Matches in a Week on Physical Performance and Injury Rate」
を参考に紹介します。
研究対象
スコットランドリーグのトップチームの07/08と08/09シーズンを対象に研究してます。
具体的なチームはチーム情報保護の関係で発表されません。
(2シーズン通して、CL:16試合、スコットランドCup:7試合,スコットランドリーグCup:6試合。ということなので、気になる人は調べてください。)
研究デザイン
- 「試合出場」の定義は、 75分以上出場した場合を
- 「週2試合出場」の定義は、試合後4日以内に行われた試合に出場した場合
- 「週1回未満出場」の定義は、試合後6日以上出場しなかった場合
と定義しています。
週2試合した選手は怪我のリスクが6倍以上に高まる
上のグラフは1000時間プレーあたり起こる怪我の数です。
練習中での怪我率では、
- 「週1試合未満の出場」での練習では、2.5回
- 「週2試合以上出場」での練習では、8.3回
と、練習では怪我のリスク3倍近く上昇しています。
加えて試合中の怪我率では、
「週1試合未満の出場」では、19.3回
「週2回以上の出場」では、97.7回
と、試合では怪我のリスクが約5倍上昇します。
それに加えて、「週2試合出場」するような選手はチームの中心選手であるため、
他の選手に比べて全体のうちの試合のプレー時間の割合が多くなります。
その結果、プレー時間全体では
- 「週1試合未満の出場」では、4.1回
- 「週2回以上の出場」では、25.6回
と、週1試合出場の選手より全体の怪我のリスクが約6倍も高まることが明らかにさています。
特に重篤なケガのリスクが高まる
「週2試合の出場」が怪我のリスクを高めることは分かりましたが、ではどのようなケガのリスクが高まるのでしょうか。
上のグラフは、2シーズンの間に発生した怪我の重症率の割合を表した物です。
注目するべきは、重症度の高い怪我の割合がより高くなっているということです。
微細なケガは1.2倍、軽度の怪我は約2倍、中度の怪我も約2倍ですが、
1か月以上の離脱を強いられる重症怪我数は5倍になっています。
下は重症度の割合を円グラフにしたものです。
やはり、中度と重度の怪我の割合が高くなっているのが分かると思います。
どのようなケガのリスクが高まるのか
次に、どのような怪我のリスクが高まるのか。
「週2回以上の出場」では特に、膝関節の怪我が多いことに加え、
半月板や軟骨の怪我のリスクが高くなっています。
膝の怪我は重症に繋がる可能性が高いことは、良く知られたことかと思います。
特に半月板の怪我のリスクがかなり高くなっているため、出場試合数の高い選手に対しては膝関節のリスクファクターを取り除くことが重要になると言えます。
再発率も高くなる。
もう一点、注目すべき点として、「週2試合出場」では再発率がかなり高いということです。
慢性の怪我のリスクも高いことからも、これは、「週2試合の出場」によって怪我を持ちながらシーズンを戦っている選手が増えている可能性も考えられます。
この点に関しては、チーム事情が絡んで来ているとは思いますが、
トレーナーの立場として、再発の可能性と重症化のリスクを説明していくことは過密日程の中では重要でしょう。