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肝臓でのアミノ酸、脂質、乳酸の糖新生【生化学】

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みなさん。
糖新生しているでしょうか。
 
糖新生とは、糖以外の物質から糖、正確にはグルコースを作り出すシステムのことです。
私たちは、この糖新生によって、血糖値をコントロールしています。
 
血糖値がある程度保たれてることは、赤血球などに非常に重要なことです。
なぜかというと、脳や赤血球は基本的には糖をエネルギー源としており、
糖がなくなると、脳や赤血球が働かなくなるからです。
 
とうわけで今回は、
「糖新生の反応経路」について解説して行きます。
 
ちなみに。
脳はケトン体でも働けるということが最近言われてるだろ!と言われるかもしれません。
確かに脳はケトン体からもエネルギーを得られますが、基本的にはグルコースを優先的にエネルギー利用します。
 
 

糖新生の代謝経路は大きく4ステップ

糖新生のステップは、大きく以下の4つに分けられます。
  1. 材料をミトコンドリアに取り込み、オキサロ酢酸を作る
  2. リンゴ酸を経由して細胞質にオキサロ酢酸を移動させる
  3. オキサロ酢酸からホスホエノールピルビン酸を作る
  4. ホスホエノールピルビン酸から解糖系逆走してグルコースを作る
 
細胞内に取り込まれた材料は、まずはオキサロ酢酸に変換するためにミトコンドリに入り、
その後、解糖系を逆走してグルコースまで変換するめに細胞質ゾル(細胞質基質)へ戻される。
 
 

 
 

⑴ 材料をミトコンドリアに取り込み、オキサロ酢酸を作る

オキサロ酢酸への反応経路は、材料によって異なります。
 
乳酸ピルビン酸は、
「乳酸→ピルビン酸」とピルビン酸に集約したら、ミトコンドリアに入りオキサロ酢酸へと変換されます。
 
糖原性アミノ酸・プロピオン酸は、
それぞれの代謝経路で代謝されて2-オキソ酸となってミトコンドリア内に入り、クエン酸回路を通ってオキサロ酢酸へと変換されます。
 
グリセロールは、
ジヒドロキシアセトンリン酸に変換され、解糖系を通ってピルビン酸となり、ミトコンドリアに入ってオキサロ酢酸へと変換されます。
 
「ピルビン酸→オキサロ酢酸」の反応は、ピルビン酸のリン酸化反応なので、ATPを消費してリン酸基を捻出する必要があります。
そのため、ここでATPが1つ利用されます。
 
これで、糖新生の材料は全てオキサロ酢酸に変換されます。
これ以降は、全て同じ反応経路を通ります。
 
 

 

⑵ リンゴ酸を経由して細胞質にオキサロ酢酸を移動させる

ミトコンドリで生成されたオキサロ酢酸は、本来なら次にホスホエノールピルビン酸に変換して、さっそく解糖系を逆走したいところです。
 
しかし解糖系は、細胞質ゾルで行われる反応であり、これを逆走する糖新生も同じく細胞質ゾルで行われます。
 そのため、まずミトコンドリアから細胞質ゾルへ移動しなければなりません。
 
オキサロ酢酸そのままでは、ミトコンドリア内膜を通過できないため、
オキサロ酢酸を一度ミトコンドリア内膜を通過できる「リンゴ酸」に変換して、ミトコンドリア内膜のトランスポーターによって細胞質に移動します。
 
「オキサロ酢酸 → リンゴ酸」の反応は、本来はクエン酸回路の中の1つの反応で、主に「リンゴ酸 → オキサロ酢酸」の向きに変換される反応です。
ですが、可逆反応なので逆向きにリンゴ酸に戻すことも可能です。
 
細胞質に移動した後は、再度オキサロ酢酸に戻すことで、
オキサロ酢酸をミトコンドリア内から細胞質ゾルに移動させたことになります。
 
ちなみに。
オキサロ酢酸のリンゴ酸を経由してミトコンドリアから細胞質へ移動するとき、同時にアスパラギン酸も細胞質に移動します。
このリンゴ酸とアスパラギン酸の運搬反応を「リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル」と言います。
「リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル」は、解糖系でできたNADHをミトコンドリア内に運んで電子伝達系で利用する際にも利用されます。
 
 

 

⑶ オキサロ酢酸からホスホエノールピルビン酸を作る

無事、ミトコンドリア内から脱出したオキサロ酢酸は、次に「ホスホエノールピルビン酸」に変換されます。
 
この反応は、オキサロ酢酸のリン酸化反応(リン酸基を付け加える)で、これに必要なリン酸基GTPからもらいます。
GTPは、ATPからリン酸基を得ているので、実質、ATPをこの反応で使用したことになります。
 
この反応が糖新生の活性度を決める反応(律速段階)です。
この反応は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼという酵素によって触媒されます。
 
ホスホエノールピルビン酸カルボキラーゼはATPによって活性化されることから、糖新生はエネルギーが余剰時に活性化される。
 
 
 

 

⑷ ホスホエノールピルビン酸から解糖系を逆走してグルコースを作る

ホスホエノールピルビン酸まで来ると、あとは解糖系を逆走して、グルコースまで進みます。
 
しかし、解糖系には以下の2つの可逆反応があります。
  • 「フルクトース6-リン酸 → フルクトール1,6-ビスリン酸」
  • 「グルコース → グルコース6-リン酸」
 
この反応を逆走するために、糖新生のための別個の酵素が必要になります。
 
「フルクトース1,6-ビスリン酸 → フルクトース6-リン酸」の反応に必要な酵素は、
「フルクトース1,6-ビスホスファターゼ」です。
 
「グルコース6-リン酸 → グルコース」の反応に必要な酵素は、
「グルコース6-ホスファターゼ」です。
 
肝臓や腎臓が糖新生を活発に行うことができる理由は、これらの酵素が多く存在するからです。
特に、グルコース6-ホスファターゼは筋肉などの組織には存在しません。
 
この2つ以外の解糖系の反応は可逆反応のため、解糖系・糖新生共に同じ反応・酵素で行うことができます。
 
 

 

まとめ

今回は、解糖系の代謝経路について解説していきました。
  • 糖新生の材料は、乳酸ピルビン酸アミノ酸プロピオン酸グリセロール
  • 材料はミトコンドリアに入り、オキサロ酢酸に変換される
  • オキサロ酢酸はリンゴ酸を経由して細胞質へ出る
  • オキサロ酢酸からホエールピルビン酸になり、その後に解糖系を逆走する
 
糖新生は、体内の糖代謝をコントロールする重要な反応であり、
飢餓時やゲガなどによる組織の損傷時にグルコースが不足しても、低血糖を起こさないようにするなど、ホメオスタシスの役割があります。
 
逆に、そういった糖新生の働きによって筋肉や脂肪の分解も関係してくるので、
これらを深く理解するためには反応経路を押さえておくことは重要になると思われます!
 
それでは!
 
 
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