サッカーの試合でグリコーゲンがどれぐらい減るのか。
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以前、サッカーの試合で起こる疲労について乳酸値を用いて紹介しました。
ここでは、乳酸値が高いということは「いかに高い強度を維持できているか」ということを意味しているという話をしました。
これは、乳酸値が高いということは、無酸素性のエネルギー供給が行えているということを意味しているからです。
これを言い換えると、解糖系のエネルギー源である。グリコーゲンを利用して続けることができるか。ということでもあります。
というわけで今回は、
グリコーゲンがサッカーの試合でどのように減っていくか。という話をしていきます。
論文の概要
今回引用させて頂くデータは、Ekblom教授が1986年に発表した
「Applied physiology of soccer(=サッカーの応用生理学)」という論文です。
かなり古いですが、サッカーにおける生理的反応を幅広く調べている論文で、今回紹介するデータ以外にも面白いデータが盛りだくさんなのでオススメです。
方法
筋中のグリーコーゲン量は意外と測定が難しく、研究で長年に渡って使われている方法は、「筋バイオパシー法」というものです。
これは、筋肉に太めの針をさして筋繊維を抜き取るという方法で、この研究でもその方法で筋中グリーコーゲン量を測定しています。
この方法で、試合前、ハーフタイム、試合後に外側広筋の筋中グリーコーゲン量を測定しています。
結果
結果は以下のグラフのようになりました。
筋中のグリーコーゲン量は、
ハーフタイムの時点で35%程度に減っており
試合後では試合前の20%程度にまで減少しています。
筋グリコーゲンの枯渇はパフォーマンスを低下させる。
筋グリコーゲンの量が低下するということは、もちろん、解糖系のエネルギー供給量が低下するということを意味します。
筋肉には、重さの約1~2%のグリコーゲンが貯蔵されています。
このグリーコーゲンは、試合を通して約80%が利用されることがこの研究では明らかにされています。
(腕など使わない筋肉では枯渇していないと考えられるますが。)
その結果、解糖系のエネルギー供給が低下し、パフォーマンスが低下することを意味します。
なぜ、グリコーゲンがサッカーの試合でそんなに枯渇するのか。
グリコーゲンは解糖系エネルギー供給の源です。
解糖系エネルギーは、ATP-PCr系エネルギーと共に素早くエネルギーを作り出すエネルギー供給系です。
そのため、サッカーに限らず、高強度の運動を含むスポーツ全般で非常に重要な役割を担います。
ATP-PCr系のエネルギー源はクレアチンリン酸です。
このクレアチンリン酸は、10秒間程度で枯渇してしまうので、ATP-PCr系のエネルギー供給は非常に短い時間で疲弊してしまいます。(その代わり数分で回復します。)
それに対して、解糖系のエネルギー源であるグリコーゲンは数十分間は持続します。
なので、サッカーのように高強度の運動(ダッシュなど)が続くスポーツでは、解糖系エネルギー供給が非常に良く使われます。
とは言えサッカーは90分間です。ハーフタイム時点で70%のグリコーゲンがすでに利用されていることからも、前半だけでもかなりの量のグリコーゲンは利用されます。
そのため、グリコーゲンを枯渇させるためには、少なくとも1時間程度は運動を繰り返す必要があります。
どのような運動パフォーマンスが低下するのか。
筋グリコーゲンが低下することで、どのような運動パフォーマンスに影響するのか。
解糖系のエネルギー供給は、ダッシュなどの高強度の運動を繰り返す場合に特に重要な役割を担います。
逆に、解糖系のエネルギー供給が低下するということは、ダッシュのスピードと頻度に影響します。
グリコーゲンが枯渇してしまうと、高強度の運動はATP-PCr系によるエネルギー供給に頼らざるを得ません。
そのため、
- 10秒間以上の時間を走り続けること
- 頻繁にダッシュを繰り返すこと
はできなくなります。
まとめ
今回は、研究をもとにサッカーの試合におけるグリコーゲンの枯渇具合について解説していきました。
- サッカーの試合では、前半だけで約70%、試合通して約80%の筋グリーコーゲンが利用されている
- 筋グリコーゲンの枯渇により、パフォーマンスが低下する。
- 特に球技ではグリコーゲンによるエネルギー供給が重要で、高強度の運動の最大パフォーマンスと頻度に影響する。
サッカーでは、明らかに後半でのグリコーゲンの枯渇が疲労の原因に挙げられ、
また、次の試合に向けていかにグリコーゲンを補給できるかも、パフォーマンスに重要であるという研究もあります。
参考文献
Ekblom, B. (1986). Applied physiology of soccer. Sports medicine, 3(1), 50-60.