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サッカー選手の怪我は何が原因で起こるのか。【前編】

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サッカー選手にとって、怪我は避けたいものであることは言わずものがなです。

 

スポーツではありとあらゆる要因が怪我を引き起こす要因となります。

特に、サッカーのようなコンタクトスポーツでは様々な要因が複雑に絡み合って生じるため、怪我の要因を突き止めることはかなりの難問になっています。

 

そんな中、世界のサッカーを統括するFIFAの研究所、

「FIFA医学評価研究所(F―MARC)」

では、サッカー選手の怪我の要因となる主な危険因子を、「サッカー医学マニュアル」にて明らかにしています。

 

今回は、これを参考にサッカー選手における怪我の要因となり得る危険因子について解説をしていきます。

 

その前に、怪我の原因と要因の違いって?

怪我の原因要因

意味的にはほとんど同じように見えますが、その違いを理解しているでしょうか。原因と要因は、地味に異なります。

 

例えば、ヘディングの競り合いの後に、着地に失敗し足首をひねって捻挫をしてしまった場合を考えると、

怪我の原因は「着地ミスによってひねったこと」になります。

つまり、怪我が起こった直接的な因子が原因に当てはあります。

 

一方で、要因とは原因が起こった背景にあるものです。

つまり、ひねることが起きる原因とも言えます。

 

つまり、怪我のリスクが高まる原理としては、怪我の要因が増えることで怪我の原因が生じやすくなる、つまり、怪我のリスクが高まるという考え方です。

 

今回は、その考え方でいうところの「怪我の要因」について、見ていきます。

 

 

怪我の要因の分類

サッカー選手における怪我の危険因子は、まずは大きく「内因性の危険因子」「外因性の危険因子」に分けられて考えられます。

 

前編では、まず内因性の危険因子について紹介していきます。

 

内因性の危険因子

内因性の危険因子とは、選手自身の状態による要因を指します。

 

もちろん、内因性の危険因子は数多くのものがあり、各要因が多から少なかれ怪我に影響していると考えられます。

その中でも、FIFAの調査によると、以下の5つの要因が怪我のリスクを増加させる主な原因とされています。

 

  • 選手の生理学的特徴
  • 筋肉・靭帯の柔軟性
  • 機能不安定性
  • 選手の心理社会学的特徴
  • 過去の障害、不十分なリハビリテーション

 

 

選手の生理学的特徴

生理学的特徴とは、筋繊維組成(速筋繊維と遅筋繊維の割合)や3つあるエネルギー供給系の違いなどを指します。

少し大雑把にはなりますが、簡単に言うと選手の代謝的な特徴のことです。

 

選手の生理学的特徴は、トレーニングによってある程度は適応させることは出来るものの、先天的に持ち合わせている特徴から大きくは変えにくい要素にはなります。

 

例えば、速筋繊維の多い選手は出力が大きい分、肉離れのような怪我が多くなる傾向にあります。

ここで問題となる速筋繊維は、長期間の有酸素トレーニングを行うことで速筋繊維を遅筋繊維化することは出来ますが、

もちろん、その分の元々あった速筋繊維での出力は出なくなります。

 

つまり、生理学的特徴に対しては合わせていく必要があるということになります。

 

筋肉の柔軟性

筋肉が硬結していることも怪我の原因につながります。

 

肉離れの多くはエキセントリック収縮の時に生じます。

この時、筋肉が弛緩できる状態であれば、筋肉はちぎれることなく引き伸ばされる力をゴムのように耐えることができます。

しかし、硬結した状態ではその力を吸収できずちぎれやすくなってしまう、つまり肉離れが起きます。

 

筋肉の柔軟性に関しては、ストレッチやウォーミングアップを十分に行うことが重要になります。

 

しかし、ストレッチに関しては、一般的に行われている静的ストレッチは筋肉の過度な弛緩を招くため、次に紹介する機能不安定性に繋がることが研究で明らかにされています。

なので、試合や練習前のストレッチはブラジル体操のような動的ストレッチが好ましいと言われています。

 

機能不安定性

機能不安定性とは、足首の不安定性膝の不安定性などが挙げられます。

 

これは、

  • 筋肉の機能の不安定性
  • 靭帯の過度の弛緩

の2つの原因が主にあげられます。

 

関節の動きに関わる筋肉は同時に関節を安定させるセンサーの機能も果たします。

足首の場合、腓骨筋群がセンサーの役割を担うことで、足首が内反(内側にひねること)している状態で地面に足をつくことを防げます。

 

一方で、靭帯の過度の弛緩も関節の不安定性に繋がります。

靭帯が弛緩している状態では、靭帯が引き伸ばされて薄く・細くなります。

その結果、さらに伸びやすく、更にはちぎれやすくなります。

 

靭帯の弛緩を修正するには、部位にもよりますが時間が必要です。

その靭帯と比較すれば、筋肉の機能を改善することはトレーニングで出来ます

足首捻挫の予防によく用いられる、バランスディスクのように比較的簡単に取り入れることが出来るものもあるので、取り入れていくべきでしょう。

 

選手の心理社会学的特徴

心理的・社会的な要素も怪我の原因につながります。

 

これらは選手がプレーに適切に集中出来ているかということが重要になってきます。

 

心理学的には、覚醒レベルが適切であることが重要であるとされます。

覚醒レベルとは、覚醒レベルが低すぎると選手の気が緩みすぎており、

覚醒レベルが高すぎると緊張しているということになります。

 

選手のプレースタイルや性格によって、ベストな覚醒レベルが異なりますが、適切な覚醒レベルであることが怪我の予防につながります

 

 

過去の障害、不十分なリハビリテーション

これは、上で説明した機能不安定性につながり、考慮するべき要素です。

多くの怪我は、初めての怪我より過去に受傷した怪我が再発する可能性の方が高くなります。

 

また、不十分なリハビリテーションは機能不安定性につながることや、本来のパフォーマンスが発揮できずイメージ通りのプレーができないことも怪我の原因につながります。

 

 

まとめ

FIFAがサッカー医学マニュアルの中で紹介している、サッカーの怪我の要因のうち、内因性の危険因子について紹介していきました。

内因性の危険因子の中には、事前に考慮しておくことで排除できる要因です。

 

一方で、後編で紹介する外因性の危険因子は管理することが難しく、それに対する根本的に改善することはできない要因になります。

 

そのため、トレーナーや指導者は内因性の要因は常に考慮する必要があると言えるでしょう。

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