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解糖系の代謝速度は、3種類の酵素によって決められている【生化学】

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みなさん、こんにちは。

 

私たち人間という生き物は、

いつもは、少ないエネルギーを使いながら平穏に暮らしていても、

激しい運動をするために、時には多くのエネルギーが必要になる。

そいう生き物だと思います。

 

そいうった、常に変わりゆくやっかいなエネルギー需要に対応すべく、

私はたちは、以下の3つの方法を使い分けて必要なエネルギーを作り出しています。

  • ATP-PCr系によって、クレアチンリン酸を分解
  • 解糖系によって、グリコーゲン・グルコースを分解
  • 酸化系によって、脂肪・たんぱく質などを分解

 

一旦、哲学的な話は置いといて、

運動生理学の観点からアスリートののパフォーマンスを考えると

  • 「いかに、クレアチンリン酸を増やすか。」
  • 「いかに、筋グリコーゲン量を増やすか。」

などといった、

「そのエネルギー供給系をいかに持続させるか。」

ということは、よく考えられているのではないかと思います。

 

 ですが、 

「いかに早くエネルギー(ATP)を供給できるか。」

ということも、アスリートの瞬発的なパフォーマンスを考えるともちろんに重要になってきます。

 

この「ATPの供給速度」を高めるためには、

「酵素をいかに活性化させて、代謝速度をいかにあげるか」

ということが重要になってきます。

 

といことで今回は、この3つの中でも、多くのスポーツにとって特に重要なエネルギー供給方法である

「解糖系」の代謝速度を高める酵素について解説して行きます!

 

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解糖系には「可逆反応」と「不可逆反応」がある

化学反応の中には、
  • 反応した後、また元の物質に戻すことができる「可逆反応」
  • 一度反応してしまうと、もう元には戻らない「不可逆反応」
があります。
 
解糖系も「代謝」であって、化学反応によって生じています。
つまりは、解糖系にも「可逆反応」と「不可逆反応」が存在しています。
 
解糖系では「グルコース」を「ピルビン酸」にまで分解していますが、
その間に合計11回の化学反応が起こります。
 
そして、その解糖系の11個の化学反応の内で、
  • 8個の反応は「可逆反応」で、
  • 3個の反応は「不可逆反応」です。
 
「可逆反応」は、その反応前後の物質の質量によって受動的にコントロールされ、
「不可逆反応」は、酵素のアロステリック効果によって能動的にコントロールされます。

「可逆反応」と「不可逆反応」では、反応のコントロール方法が異なるので、
反応速度を考える上では分けて考えなければいけません。
  

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アロステリック効果

酵素の働きを理解する上で「アロステリック効果」という効果が非常に重要になるので、補足として説明をしておきます。

 

本来、酵素は「その化学反応をサポート」することで、反応をより進める働きを持つものです。

つまり、酵素は相手を活性化させるものです。

 

ですが、いくつかの酵素は

「相手を活性化させる」だけでなく、

「自分も活性化される」ものもあります。

 

こういった影響を受ける酵素を「アロステリック酵素」といい、

その効果を「アロステリック効果」といいます。

 

アロステリック酵素が活性化されると、酵素のサポート能力が高まり、より反応が活性化します。

この効果を「アロステリック活性(または促進)」といいます。

 

逆に、アロステリック酵素の活性を抑えて、反応を阻害する効果も同時に存在します。

これを「アロステリック阻害(または抑制)」といいます。

 

酵素による代謝のコントロールには、
「アロステリック活性」「アロステリック阻害」関係性が重要になります。
マニアックな単語だと思いますが、ぜひ一度覚えておいてください。
 

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可逆反応の「反応速度」と「反応の向き」

受動的にコントロールされる「可逆反応」は、
反応前後の「物質の濃度」によって、「反応速度」「反応の向き」が決められます。
 
「A ⇄ B」という反応があれば、
  • Aが多い時は「A→B」の向きに反応が起こり、
  • Bが多い時は「B→A」の向きに反応が起こります。
 
また、よりAとBの濃度の差(濃度勾配)が大きいほど
「反応速度」はより早くなります。
 
 

可逆反応の酵素の多くはアロステリック効果を受けない

可逆反応の酵素は、基本的にアロステリック効果を受けません。
 
 
可逆反応では、反応前後の物質量が「多い物質の方 → 少ない物質の方」に反応しており、
つまり、可逆反応の前後の物質量は基本的に均等になるようになっています。
 
この均衡を保つ反応に、アロステリック促進を与えたとしても、
均衡はどこまで行っても均衡です。
 
そのため、可逆反応はアロステリック効果を受けず、
解糖系の代謝速度を制御することはできません。
 

可逆反応では物質量が反応の速度を決める



 
 

不可逆反応の「反応速度」

一方で、能動的に行われる「不可逆反応」は、
  • 「反応の向き」は常に一方通行であり、
  • 「反応速度」はアロステリック効果で制御することができます。 
 
不可逆反応でも、反応前後の物質の濃度勾配が反応速度に影響はします。
しかし、それ以上に
「アロステリック効果にる酵素の活性度合い」が反応の代謝速度に影響します。
 
それは、話を広げると、アロステリック効果が解糖系全体の反応速度を決定づけるということになります。
 
そして、解糖系の反応速度をきめる「不可逆反応の酵素」が、
  • ヘキソキナーゼ
  • ホスホフルクトキナーゼ(PFK)
  • ピルビン酸キナーゼ
の3つです。
 
そして、この中でも反応速度に特に影響力を持つ酵素が、
「ホスホフルクトキナーゼ(PFK)」
です。
 
そのため、このホスホフルクトキナーゼをいかに活性化させるかが、
「解糖系の反応速度をいかに早めるか。」に直接的につながってきます。

(もちろん「ヘキソキナーゼ」や「ピルビン酸キナーゼ」も解糖系の代謝速度に関わる重要な酵素です。)
 

不可逆反応では酵素が反応の向きを決める

 

  

 まとめ

今回は、

  • 可逆反応は、受動的に行われる「解糖系を制御できない反応」
  • 不可逆反応は、能動的に行わる「解糖系を制御する反応」
  • 不可逆反応の酵素でも特に「ホスホフルクトキナーゼ(PFK)」が重要になる。

という話でした。

 

以下の記事にて、不可逆反応の3つの酵素の解説をしているので、

この分野に興味を持っていただけた方はぜひこちらも一読ください! 

 

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