トレーニング Univ.

最新のトレーニング科学を、身近に。

解糖系でのホスホフルクトキナーゼ(PFK)の役割【生理学・生化学】

スポンサーリンク


スポンサーリンク


みなさん、こんにちは。
 
私たち人間は、必要なエネルギー量に応じて
  • ATP-PCr系
  • 解糖系
  • 酸化系
の3つのエネルギー供給系を使い分けています。
 
その中でも、多くのスポーツにおいて最も重要なエネルギー供給方法が
「解糖系」です。
 
なので、スポーツでより高いパフォーマンスを出したいと思えば、
「いかに速く解糖系で糖質からエネルギーを作り出せるか。」
ということは、非常に重要になってきます。
 
そんな、解糖系の反応速度をコントロールする最も重要な酵素、それが
「ホスホフルクトキナーゼ(PFK)」
です。
 
今回は、そんなホスホフルクトキナーゼ(PFK)が
「解糖系においてどのように代謝速度をコントロールしているか。」
ということを解説してきます。
 

 
 
 

ホスホフルクトキナーゼの活性要因

ホスホフルクトキナーゼを働きを活性化させる要因には以下の3つがあります。
  • ADP
  • AMP
  • フルクトース2,6-ビスリン酸
 
 

ADPによるPFKの活性促進

激しい運動をすると、まずADPがホスホフルクトキナーゼの働きを活性化させ、解糖系のエネルギー供給を促進します。
 
通常でも、私たちは生命の維持や軽く筋肉を動かすためにATPをADPに分解しているわけですが、
生命維持や軽運動程度のエネルギー需要では、ATPの分解量はそれほど多くなくすぐにATPを再合成することができます。
 
この状態では、ADPは蓄積せず、ホスホフルクトキナーゼは活性化されません。
つまり、解糖系のエネルギーを利用するまでには至りません。
 
 
一方で、スポーツなどで必要なレベルのエネルギー需要となると、ATPがより多く必要になり、ATPの分解速度に再合成が間に合わなくなってきます。
 
そうなると、ATPから分解されたADP量が増加し、
ホスホフルクトキナーゼを活性化させることで、解糖系のエネルギー供給を促進させます。
 

 
 
ADPによる活性は開始5秒後ぐらいから
スポーツなど激しい運動をするとADPが増加するという話でしたが、
詳しくいうと、激しい運動でもすぐにADPが増加するというわけではありません。
解糖系は、5秒程度遅れて活性化されます。
 
それは、ATP-PCr系による影響です。
 
ATP-PCr系は、解糖系より早いATPの再合成が可能だが10秒程度で枯渇する。という瞬発性に特化したエネルギー供給です。
運動を開始して5秒程度は、ATP-PCr系によるエネルギー供給が十分にあり、ATPを素早く再合成するので、あまりADPは発生しません。
 
しかし、5秒を超えるとATP-PCr系の代謝が徐々に低下してくるためにADPが増加し、
入れ替わるように解糖系が活性化します。
 

 
 

AMPによるPFKの活性促進

AMPは、ADPよりも強くホスホフルクトキナーゼを活性化さ、より解糖系を活性化させます。
これは、AMPがどのように発生するかということが関係しています。
 
AMPが発生する方法には以下の2つの方法があります。
  • ADPがさらにAMPまで分解される時
  • ADP2つからATPとAMPを合成した時
 
ADPは、本来は無機リン酸と結合してATPへと変換されていきます。
ですが、、ATPが枯渇してADPからエネルギーを得る必要がある状況になると、ADPからもリン酸基をとってエネルギー捻出することもできます。
そうなると、ADPがAMPとなります。
 
一方で、ATPが枯渇した状況でADPを分解せずATPを作る方法があります。
それが、
「2ADP → ATP + AMP」
という反応で、2つのADPの計4つのリン酸基を、3+1に再分配してATPとAMPにしてしまう方法です。
 
つまり、この2つのような方法でAMPが増加している状況とは「ATPが枯渇した状態」です。
そのため、一刻も早く解糖系によってATPを再合成する必要があるので、
AMPが増えるとホスホフルクトキナーゼは強く活性化されるようになっています。
 

 
 

フルクトース2,6-ビスリン酸によるPFKの活性

ホスホフルクトキナーゼは「フルクトース2,6-ビスリン酸」によっても強力に活性化されます。
 
フルクトース2,6-ビスリン酸は、食後などの血糖値が高い時に生成されます。
 
このアロステリック効果があることによって、
糖質が足りない時には、解糖系を抑制して糖新生を活性化させ、
糖質が十分な時には、糖新生を抑制解糖系を活性化することができます。
 
 
つまり、
糖が足りない時は、筋肉や脂肪などを分解し糖新生してエネルギーを作り出し、
糖が十分にある時は、糖新生による筋肉や脂肪の無駄な分解を抑えます。
 
食事をせずに運動をすると筋肉が分解されるのはこの酵素の影響です。
 
こうすることで、血糖値の維持・コントロールを行うことができます。
 
 
これについては、糖新生についてから説明しなければいけないのでまた違う記事で説明します。
 

 
 

ホスホフルクトキナーゼの阻害要因

ホスホフルクトキナーゼの阻害要因は以下の2つがあります。
  • ATP
  • クエン酸
 

エネルギーが十分にある時に阻害される

ホスホフルクトキナーゼはADP・AMPによって活性されますが、反対にATPによって阻害されます。
 
ATPが十分にあるということは、ATPの必要量に対してATPの再合成が間に合っているということになり、エネルギー供給が間に合っているということを意味しています。
 
解糖系による必要以上のグルコース・グリコーゲン代謝を止めるため、
ATPが十分にある時は解糖系は抑制されます。
 
 
クエン酸も、ATPと同じくエネルギー供給が十分に間に合っているということを意味します。
クエン酸はクエン酸回路の代謝物の1つであり、クエン酸が多いということはクエン酸回路が十分に回っており、
酸化系からもエネルギー供給が十分にあるということを意味します。
 
つまり、
エネルギー供給が間に合っている状況においては、ホスホフルクトキナーゼの活性が阻害され、
必要以上のグルコース・グリコーゲンの無駄な代謝を抑制するようになっています。
 
 

まとめ

今回は、

  • ホスホフルクトキナーゼはADPでまず促進され、AMPで強力に活性される
  • 血糖値を保つために、フルクトース2,6-ビスリン酸でも強力に活性される
  • 一方で、エネルギーが十分足りている時に、ATP・クエン酸によって阻害される 

という内容でした。

 

ホスホフルクトキナーゼの活性度合いが、解糖系の代謝速度を決定づけるため、

より活性するようにできれば、パフォーマンスの向上にもつながるのと考えられます。

 

そういったアプローチからアスリートのパフォーマンスを考えることも大事でしょう。

 

その他の解糖系の酵素「ヘキソキナーゼ・グルコキナーゼ」「ピルビン酸キナーゼ」についての記事は下にあります。

こちらもぜひ一読ください。

 
 
Copyright©️2018 トレーニングUniv. All rights reserved.