外傷による炎症反応|浮腫と白血球の働き・痛みのメカニズム
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怪我をすると炎症反応が起き、それを機に組織の治癒が起きます。
以前、組織治癒の再生と修復の違いと、修復による治癒の全体のメカニズムについてまとめました。
今回は、
修復のメカニズムの中でも「炎症段階」のメカニズムについて詳しく解説していきます。
炎症段階
炎症反応は、急性外傷でも慢性外傷でも本質的なメカニズムとしては同じです。
損傷が起こると炎症が起こり、炎症段階が始まります。
捻挫や肉離れのような明らかな急性外傷の場合、運動を続けることが出来ません。
運動をやめると次第に炎症が収まり、治癒過程を続けて順調に進みます。
一方、慢性外傷は微細な損傷が繰り返されることで生じます。
損傷の急性炎症が収まることなく運動を続けると、新たな損傷によって炎症が延長され、炎症段階に続く治癒過程が正常に進められません。
これによって急性炎症が慢性的炎症へと変化していきます。
慢性炎症については後ほど詳しく説明します。
炎症段階には、急性期と亜急性期があり、
亜急性期が完了すると瘢痕形成段階へと組織の修復が進んでいきます。
炎症段階の反応
炎症段階は、外傷による組織の損傷と出血に反応して始まります。
組織が損傷し出血すると、直後の2~3分間は一時的に血管が収縮し止血を行います。
続いて、損傷部位から出るヒスタミンなどが血管拡張と細胞の透過性を高めます。
血管拡張によって損傷部に血液が溜まって、腫脹ができ、
透過性の向上よって浸出液が損傷部位の周辺に溜まり、浮腫ができます。
腫脹・浮腫ができることで損傷部位に白血球が集まると、白血球の食作用によって炎症が消散されます。
炎症段階での症状
炎症段階で見られる症状として、
- 発熱
- 発赤
- 浮腫
ヒスタミンによって血管拡張が起き、腫脹が起きることで、「発熱」「発赤」が起き、
血管と細胞の透過性が高まることで「浮腫」が起きます。
急性期と亜急性期
炎症段階には、急性期と亜急性期があります。
急性期と亜急性期の違いは、炎症を消散させる物質の違いにあります。
急性期
急性期では、白血球によって炎症が収められます。
白血球はヒスチジンによる血管拡張によって増加し始めます。
これは、血管拡張は損傷後2~3時間で起こり、これに伴って白血球も増加し始めます。
損傷後3時間後から徐々に白血球は増加し、6~12時間で十分に増加し反応のピークを迎えます。
白血球の中でも最も割合が高い好中球は、24~48時間で消滅してしまいます。
その後は、好中球に代わって単球が炎症消散の役割を担います。
その後は、好中球に代わって単球が炎症消散の役割を担います。
単球は白血球に比べ数が少ないため、反応スピードは下がります。
その後、損傷後3~4日程度まで白血球の食作用は働きます。
好中球が主に働いている間を「炎症段階初期」、単球になってからを「炎症段階後期」と区別することもあります。
亜急性期
損傷後4日で急性期が終了すると、亜急性期に移行します。
亜急性期では、白血球に代わってマクロファージが炎症を収めることに主に働きます。
マクロファージは、損傷後2日後ごろから白血球が減少し始めると、入れ替わるように増加します。
マクロファージは、急性期の白血球ような素早い消散反応は起こしませんが、損傷後2日から損傷後2週間ごろまで比較的長期的に働きます。
これによって、炎症段階は終わり、続いて瘢痕形成段階へと移行していきます。
慢性炎症
慢性炎症は、急性炎症反応の間に何らかの問題があり、炎症が消散されないまま炎症段階が終了してしまった場合に起こります。
具体的には、以下のようなシチュエーションが考えられます。
- 炎症段階中に繰り返し組織の損傷が繰り返された場合
- 炎症反応を引き起こす物質が十分に分泌されなかった場合
慢性炎症になると、炎症段階が不十分なことによる影響で、次の瘢痕形成段階が正常に働かないないため、治癒後に脆弱な組織が出来ます。
これが、さらなる慢性炎症の原因となります。
浮腫による「痛み」
損傷の程度が大きい場合、浮腫の量も多くなります。
その結果、損傷部位の圧力が高まり「痛み」の症状を引き起こします。
痛み
痛みの原因には、以下の3つが挙げられます。
-
血管の変化による虚血性疼痛
-
痛み受容器への圧力
-
筋スパズム
血管の変化による虚血性疼痛では、
浮腫が血管を圧迫することで血流を阻害し、痛みを発します。
痛み受容器への圧力では、
損傷による痛み受容器へ刺激に加えて、浮腫がさらに圧力を加えることで起こります。
筋スパズムは、
これらの痛みに反応して起こる防御反応で、さらに痛みを増加させます。痛みの大部分は筋スパズムに起因しています。
「痛み→筋スパズム→更なる痛み」という痛み増加の悪循環が、最終的に痛みによる機能低下を引き起こします。
対して、治療では浮腫と筋スパズムの軽減を目的とした介入を行います。
まとめ
今回は、組織の修復過程における炎症段階のメカニズムについて解説しました。
- 炎症段階・急性期では、血管拡張と白血球の食作用が働く
- 炎症段階・亜急性期では、マクロファージの食作用が働く
- 慢性炎症では炎症が引かず、最終的に脆弱な組織ができる
- 痛みには、虚血性疼痛、痛み受容器への圧力、筋スパズムの3種類がある。
次の記事では、瘢痕形成段階について解説していきます!