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出血と浮腫のマネジメント

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怪我をすると、損傷した組織を治癒する機能が働きます。

また、多くの組織は「修復」という過程によって組織を治癒します。

 

修復過程は、以下の3段階に分けられます。

  • 炎症段階
  • 瘢痕形成段階
  • 瘢痕成熟段階

 

治療は、各段階に起こっている反応に対応して行うことが基本になります。

 

というわけで今回は、

炎症段階の治療的マネジメントについて解説しいきます。

 

 

 

 

 炎症段階での阻害要因

 
炎症段階は、その名の通り炎症反応が起こる段階です。
その炎症反応は、以下の2つに分けられます。
  • 一次的炎症反応
  • 二次的炎症反応
 
一次的炎症反応では、出血性滲出浮腫形成が起こり、これが組織修復を妨げる要因になります。
これらの症状は、受傷後3~4日まで続きます。
 
二次的炎症反応での痛みスパズムが起こり、これも、機能障害(神経的抑制、関節可動域の低下)を引き起こしリハビリなどの必要性を高めます。
これらの症状は、受傷後2週間程度まで続きます。
 
 

治療的介入の目的

一次的炎症反応と二次的炎症反応で起こる症状は、組織の修復過程を進めるために必要な反応です。なので、炎症反応自体は悪ではありません。


しかし、次の修復過程にスムーズに進むためには、炎症反応を抑えることが重要になります。

 
つまり、炎症段階での治療の目的は以下になります。
  • 過剰出血と浮腫の抑制
  • 痛みとスパズムの軽減
 
 
 
 

出血と出血性浮腫による問題

 
重度の組織損傷が生じた場合、出血量もそれに応じて多くなります。
 
その結果、過剰な出血によって過剰な出血性浮腫が形成され、これが組織を圧迫し、組織への血流を低下させます。
 
血流の低下が続くと、組織への酸素供給が需要に間に合わず、組織が壊死する「二次的低酸素症」を引き起こします。
こういった症状を引き起こす浮腫を「うっ血性浮腫」と言います。
 
加えて、静脈還流やリンパ循環を抑制することでさらに腫れを増加させることにつながります。
 
 

物理的作用

炎症反応では、出血浮腫の形成を抑制することが基本的な治療目的になります。

 

出血と浮腫形成を抑制する効果が期待される方法には以下のような方法が挙げられます。

  • 寒冷療法
  • 圧迫
  • 挙上
  • 固定
  • 薬剤投与

 

寒冷療法

 
寒冷療法は以下のような効果が生理学的に期待されています。
  • 血管収縮による血流量の低下
  • 酸素需要の低下による二次的低酸素症の防止
 
寒冷療法は、現状のエビデンスでは圧迫や挙上に比べ効果が低いとされています。
しかし、悪化のリスクが少なく、医療従事者がいない状況などで、何も行われないよりは望ましいとされています。
 
以下の禁忌を避けるために、痛みを感じない程度の温度で20分間行うことが推奨されています。
 
禁忌:レイノー現象寒冷じんましん
 
レイノー現象は、冷やした部位が打ち身のように青白くなる症状、
寒冷じんましんは、冷やした部位にじんましんが出る症状です
これらの症状が出ている場合は、冷やしすぎです。
 
 

圧迫

 
圧迫では、物理的に圧迫を加えることで滲出を減少させ、浮腫の形成を最小限に抑える効果が明らかにされています。
 
圧迫の早期的な適応と、継続的な適応はともに浮腫の抑制に効果的であることがエビデンスとしても明らかにさています。
 
しかし、均等に圧力をかけた際に浮腫の増加が見られたという報告があり、
これから、静脈還流・リンパ循環を阻害しないように注意する必要があります。
 
こういったことから、圧力は遠位から近位にかけて減少させていくことが望ましいとされています。
 
圧迫の方法は以下の3種類に分けられます。
  • 環状圧迫(全体に均等に圧力をかける)
  • 側副圧迫(両側に圧力をかける、スターアップアンクルブレースなど)
  • 局所圧迫(U字ホースシューパッドなど
 
 

挙上

 
挙上では、まず重力が静脈還流・リンパ循環を助けることで浮腫の除去を促進することと、
損傷部周辺の血管の血液量を減少させ、血管内圧を下げることで滲出を減少させることができます。
 
圧迫と並んで、挙上の効果もエビデンスとして明らかにされており、
「挙上+圧迫」による対応が最も効果が見込める組みあわせとされています。
 
 

固定(動きの制限)

 
損傷部位を固定して損傷部位にさらなる負荷がかからないようにすることで、間接的に血流増加や浮腫の形成を抑制することができます。
 
しかし、損傷部位周囲の筋肉を動かすことで、筋ポンプ作用によって静脈還流やリンパ循環を改善することは効果的であるとされています。
 
そのため、組織への負荷を防ぎつつ、筋収縮を起こさせることは効果的であると考えられています。
実際に、急性の足首捻挫に対して早期の松葉杖歩行をさせて場合にポジティブな効果が得られたことが報告されています。
 
 

薬剤治療

 
物理的介入に加えて、補助的に薬剤を使用する場合もあります。
 
急性炎症期に用いられる薬剤には、以下の2種類が挙げられます。
  • 抗炎症薬
  • 鎮痛薬
 
抗炎症薬は、ヒスタミンの放出を抑制することで血管拡張血管透過性増加抑制します。
しかし、抗炎症効果だけでなく、「鎮痛」「解熱」「抗凝固効果」もあります。
 
 
抗凝固効果は血小板の凝集を抑制するため、止血を阻害するように働きます。
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)では、持続効果が24~48時間程度でその悪影響は大きくありませんが、
アスピリンの場合は、10~12日間持続するため急性外傷には禁忌です。
 
 

まとめ

以上が、炎症段階の治療的マネジメントについてでした。

  •  一次的炎症反応では「出血」「浮腫形成」を抑制する
  • 「寒冷療法」「圧迫」「挙上」「固定」「薬剤」がこれに対する治療方法として挙げられる。

 

以上です。

 

 

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